Wedge REPORT

2014年7月25日

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勝川俊雄 (かつかわ・としお)

東京海洋大学准教授

1995年東京大学農学部水産学科卒。97年同大学大学院農学生命科学研究科修士課程修了。2002年同大学大学院農学生命科学研究科博士号取得(論文博士)。三重大学生物資源学部准教授等を経て15年4月より現職。

動き始めた政治

 日本国内でも政治主導で漁業を改革する機運が高まっている。その中心となるのが、小林ふみあき衆議院議員(広島7区)である。実家が漁網メーカーで、衰退する漁業の現場を知っている小林議員が代表となり、自民党内に若手水産研究会を立ち上げ、筆者や片野歩氏が講師となり、日本漁業を成長産業にするための政策について議論を重ねてきた。

 若手水産研究会と自民党水産政策勉強会(武部新代表)がつくる合同水産政策勉強会は、6月17日に「日本漁業再生のための個別漁獲枠(IQ)制度導入」を柱とする提言をまとめた。提言の内容は小林氏のウェブサイトに公表されている。

 日本の資源管理の問題点については、他のページWEDGEウェブ版の片野氏の連載で指摘されている通りである。日本で漁獲枠が設定されているのはたったの7魚種。しかも、頑張っても獲りきれない過剰な漁獲枠が設定されているので、無管理と大差の無い状態である。

 漁業者間の早獲り競争の結果として、クロマグロも、ブリも、大半が幼魚のうちに漁獲され、価値が高い大型個体の漁獲は低迷している。

 現在の日本漁業は、早い者勝ちの大皿料理方式の宴会のような状態である。参加者(漁業者)に比べて、料理(魚)が少ないので、あっというまに皿が空になってしまう。早食いが得意な参加者(大型巻き網)がまとめて食べてしまう一方で、ゆっくり食べる参加者(一本釣り)の取り分は無い。

 我々はこれを銘々皿スタイルに変えようと考えている。次世代を産むために必要な親魚が残るように、控えめな漁獲枠を設定する。そして、漁獲枠を予め、おのおの参加者に配分することで、平等に魚を捕る機会を与えようという考えだ。漁業者は、自分の漁獲枠が保障されているので、より価値が高い魚を狙って獲ることができる。

 世間では「改革」というと、「既得権の撤廃」・「自由競争」という先入観があるのだが、我々が目指す漁業改革は逆の方向を目指している。魚を獲る権利を既得権化し、事前配分することで、早獲り競争を抑制し、皆が持続的に利益を出せる条件を、政策によってつくることが目的なのだ。

 すでに魚が減少している場合は、一定期間減収となることも想定される。政府による補償で収入を担保しつつ、厳格な資源管理を実施することで、離島や遠隔地の雇用を担っている小規模な漁業者の収入を安定させるとともに、大規模な漁業が中心となる沖合漁業者の収益を向上させることを目指している。

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