40歳前後の社会人学生の“未来を見るまなざし”は日本の希望である
私より上の世代は、酒席やゴルフを通じて組織の文脈を学び、その延長線上に“出世”というレールがあった。
しかし、そのレールはすでに消えつつある。
いまビジネススクールに集う40歳前後の社会人学生たちは、家庭と仕事を両立しながら、自費で学び、未来を自分で切り開こうとしている。
その姿勢は、かつての「会社が育ててくれる」時代とはまったく異なる。彼らは、人口減少やAI、制度変化といった“未来の地形”を自ら読み解こうとしている。そのまなざしに触れるたび、還暦を迎えた私は、日本の未来は決して暗くないと感じる。
私自身の経験を、次の世代に返す時期が来た
幸い私は、会社同士や接待の多いゴルフではなく、好きなテニスと読書に時間を使い、新規事業、産官学連携、制度設計など、多くの現場を経験する機会に恵まれた。
ソニーで放送・通信融合の最前線にいたとき、制度 × 技術 × プレイヤー × 構造が一気に動く瞬間を目の当たりにした。その経験は、未来を“構造で読む”とはどういうことかを教えてくれた。
経験から、いまの世代に返すことができるのなら、これほど幸せなことはない。博士号を持つ優秀な教授陣の方々とタッグを組み、実務と学術を往復しながら未来を構造で読み解く。ビジネススクールは、日本企業が共通で直面する“未来の脅威”を共有し、それを乗り越えるための士官学校になりうる。
未来を読む力の欠如が、AI時代の再階層化を加速させる
未来を構造で読める人と読めない人の差は、AI時代において決定的な意味を持つ。AIはホワイトカラーの中間層を消し、意思決定層と高度専門層が浮上する。
そのとき問われるのは、「どれだけ知っているか」ではなく、「どの領域の責任を引き受けられるか」 である。未来を構造で読めない人材は。AIに代替される中間層に押し戻されるかもしれない。
だからこそ、未来を構造で読み、変数を見抜き、制度と技術を動かす力 は、企業内研修では育ちにくい。そしてこの“未来を見る力の欠如”こそが、次に訪れるAI時代のホワイトカラー再階層化を、より苛烈なものにするのである。
次稿では、AIがホワイトカラーの内部構造をどう再編し、なぜ「構造を理解できる側に回る」ことがキャリアの生存戦略になるのかを論じたい。未来を読む力を失った組織は、AI時代において最も脆弱になる。その理由を次号にて明らかにしたい。
