2026年4月26日(日)

古希バックパッカー海外放浪記

2026年4月26日

“中国的大人”の老人バックパッカーから聞く『明るい老後の生き方』

ホステル前の裏通りの路地には様々な生業がある。カフェ、ホステルの 他に写真にある縫製作業場、小型犬のブリーダー、ウェディングドレスのレンタルショ ップ、リネン類の洗濯屋など雑多である

 12月20日。元気で明るい中国の老人がチェックインしてきた。英語不能というので標準中国語で会話すると、大喜びであった。山東省済南市出身のD氏は68歳。済南市は山東省の省都であり、人口920万人という商都である。D氏によると1957年生れのD氏は1953年生れの筆者と同じ世代に属するという。つまり青春時代を文化大革命の終わりころに過ごした世代である。ちなみに習近平も1953年生れだ。中国では文化大革命の影響で満足に教育を受けられなかった、この世代を指して“老三届”と呼ばれているのだとD氏は解説。

 D氏は中学卒業後に地元の国営工場で60歳の定年まで工員として働いた。ちなみにD氏の世代では男性の定年は60歳であったが、中国でも人口高齢化と年金財政逼迫により、徐々に63歳まで引き上げるらしい。

 定年後は元気なので近所の店の手伝いなどして、小遣いを稼いで年金の足しにしているという。奥さんと2人暮らしなので、贅沢をしなければ楽しく老後を過ごせるという。奥さんは足腰が少し悪く、一緒に旅行が出来ないのがくれぐれも残念だとこぼした。D氏は年に1回こうして国内外を旅行するのが生きがいで、今回はベトナムを1カ月かけて周遊する計画だった。

 D氏の済南での日常は社区(都市部では集合住宅が並ぶ一街区を塀で囲い最小の行政単位としている)にある老人クラブで茶飲み話をしたり、麻雀・将棋をしたり楽しんでいるという。長年勤務した国営工場の同僚の大半も社区に住んでおり、そもそも社区の住民はほぼ全員同じ小学校・中学校の同窓生であり同級生もたくさん社区に住んでいる。それで老人クラブの面々は全て顔馴染みであり“老朋友”(古くからの友人)であるという。

 筆者は、北京や天津などのフツウの退職者が集う老人クラブを覗いたことがあるが、日本の市町村が運営しているいわゆる“老人の家”よりもかなり広く、設備も充実して賑やかな印象を受けた。麻雀・将棋・囲碁・卓球台は必ずある。中国の老人が元気なのは、社区の老人クラブの存在が大きいと言えるだろう。

元気闊達老人が語る“壁に耳あり障子に目あり”の監視国家中国

 D氏によると中国経済は滅茶苦茶で失業率は史上最悪。「特に若者の失業が深刻でフードデリバリーくらいしか仕事がない」と話しているうちに、D氏は次第に小声になった。D氏によると中国では共産党政治に対して、否定的な発言をするときは例え友人同士や家族内であっても、声を潜めて耳元でささやくのが習慣になっているとのこと。習近平は密告を奨励して制度化したので、やたらなことを口にできない不自由な世の中になったとD氏は嘆息した。

共産党員は特権階級、年金も極端に手厚い

 アフリカ産木材業者C氏と、老人バックパッカーD氏と、3人で雑談していたら年金の話になった。2人によると引退した共産党員の老齢年金は、フツウの退職者と比較すると信じられないくらい高額らしい。彼らによると幹部公務員で月額2万元(=46万円)、幹部教職員で1万8000元(=41万円)とのこと。この金額を受給できる共産党幹部とは、共産党員総数9000万人のなかで上位数パーセントの雲の上の階層なのだろうか。

 ちなみに2023年の上海市都市職工年金の平均支給額は5470元(=12万6000円)という。日本の厚生年金支給額とあまり遜色ないレベルである。上海市は中国で最も平均所得が高い地域なのであり得る金額であろう。

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