2026年4月30日(木)

深層報告 熊谷徹が読み解くヨーロッパ

2026年4月30日

財務大臣とエネルギー大臣が公然と対立

 燃料価格高騰対策をめぐる議論は、メルツ政権の足並みの乱れも露呈した。SPDの共同党首クリングバイル副首相兼財務大臣は、4月に入ってから、「エネルギー税の引き下げだけではなく、燃料販売企業への臨時課税、および燃料価格への上限設定を行うべきだ」と提案した。

 これに対しキリスト教民主同盟(CDU)のカテリーナ・ライヒェ経済・エネルギー大臣は4月10日、複数の放送局のビデオカメラの前で、クリングバイル財務大臣の提案を批判した。

 ライヒェ大臣は「SPDの提案は、多額の費用がかかり、効果が弱く、憲法に照らして問題がある。たとえば私は偶発的収益への臨時課税に反対だ。このような時期に、新しい税金によって石油関連企業の体力を弱めることには意味がない」と発言した。

 連立政権で、異なる党に属する大臣の間で意見が対立することは珍しくない。ただし普通そのような対立は表に出されずに、閣内での話し合いによって解決される。だがライヒェ大臣は、副首相のエネルギー対策を、メディアの前でこき下ろしてしまった。

 ライヒェ大臣の発言はSPDだけではなく、メルツ首相をも怒らせた。メルツ氏は政府関係者を通じて、メディアに対し「メルツ首相は閣僚が公に他の閣僚の意見を批判していることに奇異の念を抱いている。メルツ氏はライヒェ大臣に対し、言動を慎むよう伝えた」というコメントを流させた。首相が同じ党に属する閣僚を公に「叱責」したのは異例だ。

ルフトハンザがフライトを2万便削減

 欧州で強く懸念されているのが航空燃料(ケロシン)の不足と価格の高騰だ。ドイツのルフトハンザ航空は4月21日、航空燃料の価格の高騰などを理由に、今年5月から10月までに約2万便のフライトをキャンセルする方針を明らかにした。

 同社は4月16日、ドイツの地方空港とハブ空港などを結んでいた子会社シティーラインの短距離便の運航を停止した。現在航空燃料の価格は、イラン戦争勃発前に比べて約2倍に上昇している。

 経済エネルギー省のライヒェ大臣は4月20日に航空業界や石油業界の関係者と協議した結果、「今のところドイツで航空燃料が不足する危険はない。ドイツには航空燃料が約100万トン備蓄されている」と発言した。ただし大臣は「中東情勢がさらに緊迫した場合には、政府が民間と協議して、新たな対策を打ち出す可能性もある」と付け加えた。ドイツは航空燃料の約45%を国内で精製しているが、約55%を輸入に頼っている。

 欧州委員会は4月22日、エネルギー危機に対応するための「AccelerateEU」というイニシャチブを打ち出した。欧州委員会はEU域内の航空機や自動車の燃料の輸入量、消費量、精製量などを常時モニターする「燃料監視機関」を設置し、不足の兆候が生じた場合には加盟国間の融通措置などをコーディネートする。


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