2022年7月3日(日)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2014年7月30日

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「第二の江沢民」となった胡錦濤

 それでは、引退したはずの胡錦濤前主席は一体どのような力をもって、現役の習主席を操って腐敗撲滅運動を主導することができるのか、という疑問は当然浮かんでくるだろうが、それに対する答えも実に簡単だ。要するに今、人民解放軍を握っているのはまさにこの胡錦濤前主席だからだ。

 そう、自分の政権時代の十年間、江沢民によって軍を握られ散々虐げられた胡錦濤は今、軍を掌握することで「第二の江沢民」になっているのである。

 胡錦濤による軍掌握の一部始終は2012年10月に遡る必要がある。この年の10月といえば、共産党第18回大会の11月開催を控えて胡錦濤の引退は間近になっていた。しかし、このタイミングで、胡錦濤は中央軍事委員会主席の権限において、人民解放軍の新しい参謀総長を任命した。それはすなわち現在の房峰輝参謀総長である。

 房峰輝はもともと広州軍区の参謀長だったが、2005年に当時の胡錦濤軍事委員会主席が初めて多くの軍人たちの軍階級昇進を実行した時、その中で房峰輝は少将から中将への昇進を果たした。それ以来、房峰輝は胡錦濤主席に近い軍人の一人として出世を重ね、2007年には重要な北京軍区の司令官に任命された。そして2009年、中国は建国六十周年を記念して天安門広場で盛大な閲兵式を執り行う時、「閲兵指揮官」として胡錦濤主席の側に立ったのはまさにこの房峰輝であった。それ以来、彼は数少ない「胡錦濤の軍人」として認知されるようになった。

 そして2012年10月、共産党総書記と党の軍事委員会主席からの引退を一ヶ月後に控えて、胡錦濤主席は突然、軍の作戦を担当する重要ポストの参謀総長に房峰輝を任命した。それはどう考えても、胡錦濤が自分の引退後の軍掌握を計るための布石以外の何ものでもない。引退以前の江沢民のやったことを、胡錦濤がそのままやろうとしているのである。

 胡錦濤の動きはそれで止まったわけではない。いよいよ11月に入って党大会の開催が目前に迫ってきた時、彼はまたもや動き出した。11月4日開催の中国共産党中央委員会、つまり胡錦濤自身が党の総書記として主宰する最後の中央委員会において。彼は軍人の范長龍と許其亮の両名を党の中央軍事委員会副主席に任命した。

 胡錦濤が行ったこの最後の軍人事は実に異例である。彼はその4日後の11月8日に開催予定の党大会において引退する予定である。本来なら、軍事委員会の新しい副主席任命の人事は、党大会後に誕生する新しい総書記・軍事委員会主席(すなわち習近平)の手で行われるべきである。普通の会社でも、新しい代表取締役社長が誕生すれば、次の役員人事は新しい社長の手で行われるのは普通であるが、胡錦濤はこの「普通のこと」をやろうとしなかった。自分の引退が決まる党大会開催わずか4日前に、彼は大急ぎで次の中央軍事委員会の最重要人事を自分の手で行った。習近平が新しい軍事委員会主席に就任した暁には、その周辺は既に「胡錦濤の軍人」によって固められたわけである。

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