2024年11月24日(日)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2014年7月30日

 このような状況はどう考えても胡錦濤派にとって大変有利であるが、その中で焦点となるのは次の党大会で誕生する新しい政治局常務委員会の人事である。前述のように、今の政治局常務委員の7名のうち4名も江沢民派となっているが、彼ら全員は60代後半となっている。現在展開している江沢民派掃討作戦の中で彼らがいつ失脚するか分からないが、たとえば服従の姿勢を示すことによって次の党大会まで今の立場を維持できたとしても、この党大会では彼ら全員は確実に退場するのであろう。そうすると、次の党大会で誕生する政治局常務委員は半数以上の入れ替えが予測され、政治局から多くの幹部が常務委員会に上がってくる公算となる。

 それでは、現在の政治局委員の誰が上がってくることになるのかとなると、その時こそ、今の政治局で活躍している胡錦濤派の50代前半の幹部たちの出番となろう。年齢の優勢からしてもそうなってしまうのが普通であるし、胡錦濤が軍を握ったままの状況下なら、ほぼ間違いないと思う。

 そうすると、胡錦濤派(すなわち共青団派)の次なる政権戦略ははっきりと見えてくるのであろう。つまり、今の習主席たちと手を組んで江沢民派を一掃して江沢民の影響力を完全に排除した暁には、残された党内の最大勢力はすなわち彼ら自身である。そして、次の党大会までに(あるいは次の党大会において)政治局常務委員会から江沢民派の残党を一掃した後には、軍の支持をバックにして共青団派の若手幹部を政治局から大量に昇進させ、次期の政治局常務委員会、すなわち党の最高指導部を一気に掌握してしまうのである。

 そうすると、今から三年後に開かれる予定の党大会を経て、そのまま胡錦濤派の天下となろう。そしてその時こそ、在任中には江沢民派に抑えられて辛酸をなめ尽くした胡錦濤その人は、中国の実質上の最高指導者としてこの国に君臨するのである。

 おそらくそれはすなわち胡錦濤と共青団派の目指す「天下取り戦略」の全容であろうが、今や習主席が旗を振って展開している腐敗撲滅運動は結局、胡錦濤派による「天下取り戦略」の露払いであるにすぎない。習近平主席という人はむしろ、胡錦濤の手のひらで踊らされている操り人形のようなものだ。

 言ってみれば、腐敗撲滅運動の陰で高笑いして、そして最後に笑うのは、やはり胡錦濤という江沢民以上の狸親父なのである。

[特集]徹底解剖!中国の権力闘争


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