2026年6月15日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2026年6月15日

 習近平は14年、中国の最高指導者として初めて、同盟国たる北朝鮮より先に韓国を公式訪問した。一方、北朝鮮には19年までの6年間一度も訪問することはなかった。

北朝鮮を再び「戦略的緩衝地帯」に

 この状況の転換点が18年であった。鄧聿文は同年にも興味深い論文を発表している。シンガポールでの米朝首脳会談(18年6月)の直後、米国による中国に対する大規模制裁関税の可能性が迫っていた頃、「聯合早報」に発表した「金正恩3度目の訪中における中朝両国の意図」と題する論文では、北朝鮮による核保有への批判は姿を消し、核兵器を完全に放棄するつもりがないのであれば、むしろ同国を対米政策上の「駒」として活用するという考え方を展開するものであった。

 特に強調されたのは、北朝鮮の核保有がもつ、中国の対米戦略上の意義であった。同氏は、「北朝鮮が核兵器を保有し続ける限り、北朝鮮は米国を封じ込める上で強力な要因となる」と指摘した。

 実際、この頃から北朝鮮の非核化に対する中国の姿勢は変化した。例えば、日中韓首脳会議の共同宣言に、「朝鮮半島の非核化」を、中国も共有する目標として記述したのは19年12月が最後になった。

 24年5月に開催された会議の共同宣言には「朝鮮半島の非核化」との文言は含まれたが、それは共通の政策目標としてではなく「それぞれの立場」とされた。また25年9月に金正恩訪中で発表された共同宣言には、「朝鮮半島の非核化」への言及がなかった。

 習近平の訪朝を前に投稿された上記論説は、この延長線上にあり、もはや「朝鮮半島の非核化」は対北朝鮮政策の中心に据えるべきではなく、「日米韓の軍事協力の進展」に対抗するための北朝鮮との協力が、「朝鮮半島の非核化」よりも優先するとしている。今回の習近平の訪朝が、北朝鮮を再び「戦略的緩衝地帯」に組み込もうとする方針に立脚しているとの見方は、正鵠を得たものと考える。

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