2026年6月24日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2026年6月24日

 サウジアラビアとの合意は拡散への防止手段を弱め、価値ある前例をひっくり返すことで、その正反対の意味を持つだろう。それが成立すれば、他の同盟国も同様の取り扱いを求めるようになり、世界はなおさら危険になる。

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とん挫した米国、サウジアラビア、イスラエルの合意

 米国・サウジアラビア間の原子力協定というと、原子力分野の技術的な問題かと思われがちであるが、米国、サウジアラビア、イスラエルの三者の利害が関わっており、世界の核秩序への影響のみならず、中東情勢への含意がある。

 背景をなすのは、アラブ首長国連邦(UAE)、バーレーンがイスラエルと国交を正常化した2020年のアブラハム合意である。それに、スーダン、モロッコが続いた。

 21年に政権の座に就いた米国のバイデン政権は、これらに続いてアラブの大国であるサウジアラビアとイスラエルとの国交正常化を実現すべくサウジアラビア、イスラエルとの折衝を重ねた。その際、サウジアラビアは、イスラエルとの国交正常化に踏み切るための条件として、米国に対して三つの事項を求めていたとされる。防衛のコミットメント、武器の供与、原子力協定でのウラン濃縮の容認の三点である。23年10月に勃発したガザ紛争がなければ、それが実現していたかもしれないとも観測される。

 ところが、ガザ紛争によって構図が変わった。このガザ紛争によって、サウジアラビアとして、イスラエルとの国交正常化に動くためのハードルが上がった。そこで、米国、サウジアラビア、イスラエルの三者による三者合意は棚上げとせざるを得なくなった。

 残ったのは、米国とサウジアラビアの二者合意である。トランプ政権はその実現に向けてギアを上げているように見える。

 トランプ政権は、原子力協力、防衛協力、AI協力の三点セットでサウジアラビアとの関係強化を図ろうとしている。その狙いは、当面、イスラエルとの国交正常化を含めた三者合意は困難としても、それに向けてのベースとすることであり、サウジアラビアが中国やロシアに傾斜しないように米国との結びつきを強めることであり、これらの協力から経済的利益を引き出すことである。


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