2026年6月24日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2026年6月24日

2つの懸念

 そこで、原子力協定であるが、この社説が問題提起をしているとおり、サウジアラビアの米国への要求は、米国が長年、超党派で取ってきた核不拡散政策からの大きな逸脱を含んでおり、トランプ政権がそれを呑み込んでディールをまとめようとしていることが懸念されている。

 具体的には二点。一つは、サウジアラビアに対してウラン濃縮を認める見込みであるとの点。もう一つは、米国が各国との原子力協定において条件として求めてきた国際原子力機関(IAEA)の追加議定書の締結をサウジアラビアには求めない見込みであるとの点である。

 ウラン濃縮は、プルトニウムを取り出す再処理とともに、核兵器に不可欠な核分裂性物質を得るための技術であり、それを制限することは、核不拡散のための「一丁目一番地」の取り組みである。その重要性はイラン核問題で議論されるとおりである。

 IAEAの追加議定書とは、1990年代、北朝鮮とイラクが未申告施設で核開発を行っていたことが明らかとなった経験を踏まえて「抜き打ち査察」の仕組みを組み込んだものであり、国際社会に隠れて核開発をする試みを探知するための「切り札」の存在である。

 なぜサウジアラビアがウラン濃縮を望み、追加議定書を嫌うのか、その点について大方の見方は、状況次第では核開発に転じるオプションを保持しているから、というものである。実際に、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマーン皇太子(MBS)は、イランが核を持てば、サウジアラビアも核を持つと公言していた。

 核拡散のリスクは、中長期的なものであり、すぐには目に見えない。それに反して、核拡散のリスクを無視してディールをまとめれば、短期的に目に見える利得が得られる。トランプ政権下では、後者に流れる可能性が大である。
付言すれば、仮にこのようなサウジアラビアとの原子力協定を強行すれば、米国にとって短期的なマイナスも生じる。米・イラン関係において、イランは、米国のウラン濃縮についての要求に対して反駁する材料をまた一つ得ることとなる。

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