最も早い年金受給年齢はまず64歳に引き上げられ、その後も平均余命の変化とともに上昇していく。年金委員会は「年金受給年齢を決める基準を、保険加入年数ではなく、持病の有無など市民の健康状態に変えるべきだ」と提案している。
保険料収入増への改革
メルツ政権は、保険料収入を増やすために、現在は公的年金保険で原則としてカバーされていない自営業者や連邦議会議員らに対しても、公的年金保険制度への保険料の支払いを義務付ける方針だ。(ただし独自の年金制度を持っている職種は除く)
月収が603ユーロ(11万1555円・1ユーロ=185円換算)以下の低賃金部門(ミニジョブ)で働く市民の大半は、公的年金保険の保険料支払い義務を免除されているが、メルツ政権はこれらの市民にも保険料払い込みを義務付ける。ドイツの公務員は、「ペンジオーン(恩給)」と呼ばれる独自の年金制度を持っており、公的年金保険制度の枠外にいる。将来、公務員にも公的年金保険への加入を義務付けるかどうかは、まだ決まっていない。
メルツ政権は、スウェーデンに似た、積立型の年金基金を新しく設置する。現在のドイツの公的年金は、現役世代が支払う保険料をその時点での年金受給者に支払う賦課方式だが、新しい年金基金では国民1人ひとりが払い込んだ保険料を積み立てる。
集められた保険料は、公的機関によって株式市場などで運用される。将来、市民の所得の2%が年金基金への保険料として払い込まれる。保険料は労使が半分ずつ負担する。
ドイツではオランダなどに比べると企業年金が広く普及していない。企業年金制度があるのは大企業が中心で、中小企業で働く市民の多くがカバーされていない。そこでメルツ政権は、新しい法律を施行させて、就業者の大半が企業年金を持てるようにすることを目指している。
巨額の赤字を国が補填
改革の目的は、公的年金保険の収支の改善だ。日本と同じく高齢化と少子化が進むドイツでは、公的年金保険制度が恒常的に赤字を抱えている。24年の年金保険の支出額は4030億ユーロ(74兆5550億円)で、約20億ユーロ(3700億円)の赤字だった。
25年の赤字は55億~70億ユーロ(1兆175億~1兆2950億円)に膨らむ見通し。25年の年金支出は前年比で5.7%増加したのに対し、年金保険料収入は4.5%しか増えなかった。
政府は年金保険料率が急増するのを防ぐために、連邦予算によって収支のギャップを補填している。このため年金の赤字補填を担当する連邦労働・社会保障省の予算は1970億ユーロ(36兆4450億円)にのぼり、25年のドイツの連邦予算の37.9%を占めている。
メルツ首相は昨年8月30日に行った演説の中で「社会保障制度を現在のまま放置した場合、将来は制度を維持できなくなる。社会保障制度を維持するために、改革を断行する」と述べていた。同氏は「この改革は痛みを伴い、険しい道になるが、この道を行く」と固い決意を強調した。
