2026年7月7日(火)

プーチンのロシア

2026年7月7日

ロシアが関係修復を求める事情

 こうした一連の動向からうかがえるのは、ドイツ、米国、韓国といったロシアへ制裁を科す西側諸国の従来と異なる、ウクライナ停戦を見据えたアプローチの兆しである。そして、それらを誘引しているのはロシア側の明らかな対応の変化にある。

 ロシア政府高官が西側諸国に対し経済関係の修復を志向する姿勢は、ウクライナ戦争が長期化する中で24年頃から徐々に顕在化し、26年に入りより明確な形で表面化してきた。その理由は二つある。

 一つ目はロシア経済の苦境である。26年第1四半期、ロシアの実質国内総生産(GDP)成長率はマイナス0.2%成長に沈んでいる。製造業や建設セクターの低調が顕著となり、成長率の押し下げ要因となった。特に国内投資は、マイナス14.3%とこれまでにない落ち込みをみせている。

 ロシア中銀は、戦時経済の長期化に伴うインフレを抑え込むため、高金利政策(26年6月、政策金利キーレートは14.25%)を維持しており、これが国内投資や建設需要を構造的に低減させ、民間経済を縮小させている。

 ウクライナの長距離ドローン攻撃も効果を発揮している。26年5月、ロシア第2位の精製能力を持つキリシ製油所(レニングラード州)は、ウクライナのドローン攻撃により操業停止を余儀なくされた。6月には、モスクワ市内の製油所が複数回攻撃を受け、高層住宅や工業施設、民家にも被害が及んだ。

 国内のガソリン供給不足や価格高騰を抑制するため、ロシア政府はたまらず26年4月からガソリン輸出を全面禁止した。製油所の修復にあたっては、制裁下であっても、西側諸国から導入できる技術や機器調達があれば、継続したいというのが、ロシア石油ガス企業の本音だろう。

プーチン大統領による布石か

 二つ目はプーチン大統領による戦術転換である。限定的とはいえ、ロシア政府高官による西側諸国への融和的な対応は、現在のロシア統治構造においては、プーチン氏の明確な政治的意思なしには起こりえない。

 プーチン大統領は、「ビジネス」のフィールドについて、西側諸国との「全面対立」から「管理された再接続」を徐々に試みようとしているように見える。これは、停戦・戦後を見据えた布石とも捉えることが出来るかもしれない。

 こうした動きの背景には、ロシア国内情勢の変化も影響していると考えられる。プーチン大統領の支持率は79%(26年5月、ロシアの独立系世論調査機関「レヴァダ・センター」データ)と高いが、ウクライナのドローン攻撃に伴うインターネット遮断(26年3月、モスクワで3週間に及ぶ遮断)や26年1月からの付加価値税(VAT)の引き上げ(20%から22%へ)、厭戦気分の高まりから、支持率が示す以上にロシア国民は不満を蓄積しつつある。

 翻って日ロ関係はどうすべきか。ウクライナ戦争の動向やこれに伴うロシアの国内情勢、西側諸国による対応の変化の兆しを機敏に察知しつつ、国益の最大化を念頭に、日本としての立場を戦略的に構築していく必要がある。

※本文内容は筆者の私見に基づくものであり、所属組織の見解を示すものではありません。

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