2026年8月21日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2026年8月21日

世界標準へのせめぎ合い

 この記事の主要点は以下4点である。①中国のフロンティアAIの性能が急速に向上し、米国の優位性が失われつつある。②米国がMythos等の最先端モデルに対する外国勢のアクセスを禁止または制限しているのに対し、中国はオープンウェイトで公表し、安価で便利なことから利用が急速に広がりつつある。③中国のオープンウェイトの利用拡大はハッキングの隙を作り出す等のリスクを伴う。④中国も今後は自国製品へのアクセス制限に踏み切る可能性がある。

 以上は中国によるAI開発の現状とその問題点を指摘したものであるが、新型AIモデルに対する規制の背後には、AI開発に対する国家戦略がある。

 まず、中国の先端AIの性能向上は、実に目覚ましい。AI性能について世界的権威の「Arena AI」が、米中のAIモデルについてテストした結果、遂に7月16日発表の中国のKimi K3が米国のClaude Fable 5を上回った。

 4月にMythosを公表した Anthropic のアモデイ最高経営責任者(CEO)は、「半年から 1年で中国が追いつく」可能性に言及していたが、実際には半年もしないうちに大きく近づいたことになる。世界はこの速度に注目している。

 第二に、中国製AIの基本は「開放性」だ。中国がそのフロンティアAIをオープンウェイトで公表するのはこの基本に関連する。Kimi K3が公開された翌7月17日、上海で開かれた「世界AI大会」における演説で習近平主席は、「オープンソース、開放性、協働、そして共有を促進すべき」と述べた。

 これは単に経済的合理性によるだけでなく、コストと多少のリスクがあっても、自国AIを普及させることで、中国製品を「世界標準」にすることを目指している。その先には「フィジカル AI」で世界一になること、AIを統合した人間型ロボットで世界的支配を確立する狙いがある。

 現在、米国政府は最先端モデルに対するアクセスを厳しく規制する方針をとっているが、これは中国が最先端のAIを構築できるのは結局のところ米国の技術を「盗む」ことができているからだとして、技術流出を断固遮断するとの考え方に立っている。他方、米国製モデルへのアクセスが禁じられている間に、中国製モデルが市場を席捲してしまえば、事実上、中国製モデルが世界標準となってしまう。


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