鳥取から日本の10年後の課題が見える
―― 原田院長時代の18年に特別顧問になった結城さんは、数多くの改革案を出してそれらが実現していますね。新広報誌『カニジル』の創刊やアスリート対象のスポーツ医科学センターの新設、待ち時間短縮の独自アプリ〈とりりんりん〉の開発、武中院長時代にも〈とり大病院花火大会〉の開催、年2回の記者懇談会の開始など、事例にこと欠きません。
「人口減少に起因する収支の悪化などの諸問題は日本がこれから直面する難問です。でも鳥取県は人口最少だから、10年後の問題が現在目の前にあります。この課題を今解決できれば、人口最少県の鳥取県がいきなりトップランナーに躍り出ることができます。私なりの地域貢献、故郷貢献でもありますね」
―― 本書には、経営学者ピーター・ドラッカーの言葉とブランディング論の栗木契教授(神戸大学)の言葉が引用されています。これらのブランディング論が結城さんの原点?
ドラッカーは「生産性を上げるには、働く人のモチベーションを上げることが重要」と述べており、栗木教授は「どんな名前で売るかが決定的に大切」「そのことで何を実現するかを明確にする」と述べている。
「ええ。ブランディング論の基本ですからね。それは、原田前院長が医療者の心構えとして言っていた“鬼手仏心”とも通じあう理念です。手術ではバッサリ切るけど、それはその人全体を活かすため。そしてそこで働く人々の環境整備も同時に行うわけです」
鳥大病院は、医療者自ら経営を考え、診療科の壁を越えて多職種が連携することで地域ニーズに対応し、中核病院が地域文化発信の拠点となることを目指しているのだ。
―― ただ、現在の武中院長は、全国の地域病院の今後を危ういと見ていますね。倒産か経営統合か縮小、または緩やかな連帯だ、と?
「とりあえず複数病院による薬品の共同購入など考えられますが、もっと抜本的な改革が必要でしょうね。ドイツでは医大卒業後、国策で全国の病院へ数年間配置されます。日本では国立大学病院が教育・研究・診療を一手に引き受けているのでパンクしがちですが、欧米ではそれぞれ独立の機関が受け持ちます。そんなシステム自体の変更が必須ですね」
ところで鳥大病院も、建物の老朽化が進んでいる。そこで29年、新病院に建て替えるべく建設工事が着工する。新しい鳥大病院はどのような病院になるのか。
―― 世界から人が集まる病院、南海トラフ地震のバックアップ病院、人の温かみを持ったスマートホスピタル、とありますが?
「デジタル化、IT化を進めても、常に患者の側に立つ病院ですね。そして、留学生や医療研究者はいろんな国から来てほしい。境港には大型クルーズ船が年間80隻近く来ますから、医療ツーリズムを開始してもいい。他の病院がやらないことを開拓して行きたいです」
鳥大病院には、「神の手」と呼ばれるロボット手術機が現在3機種、計4台ある。これは日本初であり、世界でも例がない。
