2026年9月10日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2026年9月9日

 コルビーは、「自由で開かれたインド・太平洋」のような概念は「レトリックによる圧力」あるいは「レトリックによる挑発」にしか映らないようで、嫌っている印象である。この概念はトランプ政権の語彙には既にないのかも知れない。

東南アジア諸国は安堵したのか

 紹介した上記のJapan Timesの記者の質問は良い質問である。

 コルビーは中国や南シナ海のほか、台湾など具体的な問題には一切言及しなかった。言及しなかったのは、米国の立場は良く知られているからだと彼は応答した。しかし、良く知られているとは言えない。

 トランプの奇矯な言動もあって、この地域を脅かす主要な問題に対する米国の政策を東南アジアの諸国は確認したいと思っているに違いない。コルビーは「戦略的安定性」や「ほどほどの平和(decent peace)」の維持・達成に害を成すことを心配しているのであろうが、何か言えることはあるはずである。

 ミドルパワーの間の同盟については、コルビーは「無駄で無謀な努力は止めろ」ということを演説でもう少し上品な言葉で述べたが、この答えも同様である。しかし、質問に対する答えになっていない。

 米国に対する信頼感が低下していることを、知ってか知らずか無視している。彼の念頭には欧州連合(EU)やカナダの動きがあるのであろうが、米国を排除するものだとの理由で敵視する必要はない。トランプ政権が執拗に主張する「負担の分担(burden-sharing)」の観点から積極的に評価出来るものがあるはずである。

 コルビーの演説に東南アジア諸国が安堵したかどうかは疑問である。むしろ懸念を深めたかもしれない。トランプ政権の残りの期間を通じてはっきりしない情勢が続きそうである。

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