それを象徴するかのように、文京区周辺でささやかれる「3S1K」という言葉がある。いずれも文京区立の小学校で、ローマ字の頭文字がSで始まる誠之小学校、千駄木小学校、昭和小学校に加え、Kは窪町小学校をさす。中国人エリート家庭がこうした学校に子弟を入れようと学区内に住む動きが広がっているのである。
広がる買収対象
一方、都心の居住用物件だけでなく、地方のリゾート地にも外国人の不動産買収の波は及ぶ。長野県白馬や北海道ニセコなどでは海外からの投資が相次いでおり、政府が発表する公示地価などの公的な地価統計でも近年、上昇が見てとれる。著者はこう記す。
さらに本書では、離島、森林、農地、神社仏閣、さらには都心の米軍関連施設周辺の不動産まで中国人や中国系法人を含む外国人・外国法人の取得対象になっていると指摘する。
本書によると、自治体レベルでは約20都道府県が水源地保全のための届出条例を設けているが、これらは事前届出などを求めるのみであり、取得そのものを禁止するまでにはいたっていないという。
無防備な日本
こうした中で、日本と海外との法制度の比較により、日本の無防備さが浮き彫りになっている。シンガポールやタイでは、外国人に対する高額な税金の徴収や、コンドミニアム全体における外国人所有割合の制限、土地所有の厳格な規制などが敷かれている。一方、日本には「重要土地等調査法」という法律が存在し一定の調査や規制を行っているものの、厳格であるとはいえず、現状の問題解決としては不十分であると言わざるを得ない。
本書の価値は、実態の紹介にとどまらず、効果的な法的対策を提言している点にある。現行の防衛施設周辺や国境離島、原発周辺に加え、重要な空港や港湾の周辺、食料安全保障上重要な農地、国土保全上重要な山林などに適用範囲を広げるべきだと主張する。そして、これらの区域では基本的に外国人による土地建物の取得を認めない新法の早期制定を訴えている。
さらに、シンガポールの追加印紙税を参考に、非居住外国人が不動産を取得する際、高率の課税を課す仕組みの必要性についても記す。取得後に海外へ逃亡して徴収漏れが生じるのを防ぐ措置を含め、実効性の高い課税システムの構築が求められている。
