安全保障に必要な中国の投資
インドが中国に友好的な姿勢を見せいているように見える背景には、経済的な関係がある。インドにとって中国は最大の貿易相手だが、インドと中国の貿易は、インドが安い原材料を輸出し、中国が加工して高い製品にしてインドに輸出する関係であるから、自然とインド側が赤字になる。だから、投資のような形で中国からインドにお金が返ってこないと、インドが不利な貿易になる。
ところが、インド政府としては、中国の投資にも警戒感を持っている。印中国境の状況が悪化してからは、中国からの投資に規制をかけてきた。しかし今、一部分野に、インドは中国の投資を呼び込みたいと、考えている。
その背景には、インドで別の安全保障問題が台頭しつつあることだ。それは毎月100万人もの若者が労働市場に流れ込むインドにおいて、雇用を提供することだ。なぜこれが安全保障問題なのか。
ハーバード大学の故ハンチントン教授は、その著書『文明の衝突』の中で、スリランカで内戦を戦う双方の集団の15~24歳までの人口が、総人口の20%を超えた時期に、内戦が激化したことを上げている(サミュエル・ハンチントン著、鈴木酒主税訳『文明の衝突』(集英社)395ページ)。インドの場合、現在18%で、しかも14歳以下の人口が29%もいることから、15~24歳までの人口が20%を超える時期が迫りつつある。
最近インドでは、若者のデモが盛んだ。インドの教育相が辞任するまでに至っている。そのような環境の中、インドにとっては、例えばインフラ開発へ投資を呼び込み、経済をより活性化させ、若者の雇用をもっと生み出すことが重要になっている。だから、インフラ開発などへの投資では、中国にも期待する側面があるのである。
立て続けに続く日本との協力
とはいっても、モディ政権は、中国に対する警戒感を露骨に示してきた。習主席、プーチン大統領との笑顔の写真を撮る一方で、最近、日本との防衛関係が急速に高まっている。
7月初め、高市早苗首相が訪印した。その直後、インドのクマール国防次官が訪日している。そして8月には小泉進次郎防衛相が訪印したが、その時には、歴史的な海洋安全保障の協力覚書に署名しただけではなく、小泉防衛相とモディ首相の会談も行った。まさに習主席が訪印する9月12~13日と重なる日程で、9月9~21日、日本のF-2戦闘機がインドを訪問して、共同演習を行う予定だ。
思い出すと、昨年もそうだった。25年9月に中国が上海協力機構の首脳会談を主催した際、中国は首脳会談の直後に「抗日戦勝80周年」を記念する軍事パレードを企画した。
