厳格化されたコレステロール目標値
本ガイドラインでは、悪玉コレステロール(LDL-C)およびNon-HDL-Cの絶対的な数値目標が、下記のように復活・厳格化された。ここが今回の改定で一番議論を呼んでいる部分かもしれない。Non-HDL-Cとは、総コレステロール値から善玉のHDLコレステロール(HDL-C)値を引いたもので、動脈硬化を引き起こす「すべての悪玉コレステロール」の総量を表す。
① 二次予防(心血管疾患の既往がある超高リスク群): LDL-C 55 mg/dL未満、Non-HDL-C 85 mg/dL未満を目指す。18年のガイドラインでは30〜49%の減量としていた目標を50%以上の減量に相当する極めて厳格な目標値が設定された。
② 一次予防(高リスク群:PREVENT 10%以上など): LDL-C 70 mg/dL未満、Non-HDL-C 100 mg/dL未満を目指す。
③ 重症高コレステロール血症(LDL-C 190 mg/dL以上): LDL-C 100 mg/dL未満(高リスク条件伴う場合は70 mg/dL未満)の達成を図る。
LDL-C 55mg/dL未満という厳格な目標値を達成するには、スタチンの単剤投与を最大耐容量にしても困難なケースが多く、スタチンに加えて最近市場に登場した新薬も含めた多剤併用療法(Combo Therapy)の積極的な活用が位置づけられている。
ここには大きなジレンマもある。これだけ複数の治療薬を重ねることで副作用としての筋肉症状が出やすくなったり、スタチンによる新規の糖尿病発症リスクが高まるのではないかという懸念の声も上がっている。
それに何と言っても高額な新薬を長く使い続けることによる医療費の増大がある。この費用対効果の問題は、米国の臨床現場でもかなり批判的に議論されている。
遺伝指標「Lp(a)」の生涯1回測定と特定集団への配慮
新たな臨床検査についても推奨が加わっている。遺伝的に決定される強力な心血管リスク因子であるリポプロテイン(a)(Lp(a))について、すべての成人に対して「生涯に少なくとも1回は測定すること」が強く推奨された。
Lp(a)は、50 mg/dL以上で心血管リスクが約1.4倍に上昇し、リスク増悪因子とみなされる。100 mg/dL以上でリスクは2倍以上に増加する。180 mg/dL以上の場合リスクは約4倍となり、ヘテロ接合体家族性高コレステロール血症(HeFH)と同等のハイリスクとみなされる。
HeFHは、父親または母親のどちらか一方から受け継いだ遺伝子変異により、血液中の悪玉コレステロール(LDL-C)が若い頃から高くなる遺伝性の疾患である。一般人口の約300人に1人の割合で見つかる。
Lp(a)は食事や運動などの生活習慣改善では低下しにくいため、高値が確認された場合は、その他の修正可能なリスク因子(脂質、血圧、血糖)の早期かつ厳格な管理と、必要に応じて高価な薬による強力なLDL-C低下療法が求められる。
