こうした傾向は、連邦政府の12歳以上を対象とした「アルコール依存症患者」の追跡調査にも表れており、21年当時、国民全体の10.6%だったのが、25年には8.9%に減少していることとも符合している。
「アルコール依存症患者」の「症状」としては、「いつも飲みたがる」「最初意図した時より多量そしてより頻繁に飲む」「酒量の減量を試みても抑制出来ない」など11項目が、医学会の判断基準とされている。その減少については、近年、一部の専門家の間で肥満症治療薬として評判となっている「セマグルチド」の服用との関連性が指摘されていた。しかし、常用者は成人の8人に1人と限られていることなどから、医学上、大勢の見解には至っていない。
崩れた『酒は百薬の長』“神話”
むしろ、一般市民の間でのアルコール摂取量の減少については、「健康認識の歴史的シフト」が主な要因としてクローズアップされてきている。
米国社会では従来、「日常、グラス1~2杯程度のワインは健康増進のもと」と広く信じられてきた。ところが、「ギャラップ」社の最新調査で、米国人の過半数(51~53%)が「たとえ少量でも健康を害する」と信じている実態が初めて明らかにされた。01年調査時(27%)から倍増したことになる。
さらに、そう思う理由として、調査対象者の86%が「飲酒自体が、がん、心臓病、精神不安のリスクを高めることを指摘した最新の医学的研究についてニュースで知った」と回答していることが分かった。
その「最新の医学的研究」だが、主なものとしては、①世界保健機関(WHO)研究報告(23年)②ランセット・グローバル疾病リスク・レポート(26年)③米保健人的サービス省(HHS)および国立がん研究所生理学メカニズム研究(26年)などが挙げられる。
そのいずれも、「適度の飲酒は健康にプラス」とするこれまでの社会通念を根本的に覆した点で、“画期的警告書”として重視されている。
「WHO報告」の中で最も注目されたのが、「いかなる量のアルコールであっても健康上、安全ではない」とした指摘だ。そして、次のような研究上の「最終見解」を明らかにしている:
① 「アルコールは、アスベスト、たばこと同様に、『グループ1』の発がん性物質のカテゴリーに分類される。アルコールに起因するあらゆるがん患者のうちの半数が、1週間で1.5リットル以下の少量のワインを飲んだ人たちで占められている」
② 「アルコールは、大腸がん、乳がんなど、7タイプのがんの原因となる」
国連機関の報告に続き、米国でも去る25年1月には、公衆衛生の政府最高責任者であるSurgeon General(公衆衛生長官)が、飲酒とがん発病との相関関係に言及した通達を出したほか、連邦保健福祉省所轄の疫病予防管理センター(CDC)も、「いかなる量の飲酒もがん発症のリスクを高める」「酒量を減らす方が増やすより健康にプラス」などとする研究結果を発表している。
さらにより具体的に、飲酒に起因するがん死亡者数の実態についても、「26年ランセット米国内健康追跡調査報告」によると、90年当時の死者数は約1万1000人だったが、23年には2万3000人にまで増えたという。
