こうしたことから、日本でも古くから言い伝えられてきた『酒は百薬の長』の“神話”は、米国社会に関する限り、すでに崩れ去ってしまったことになる。
物価高のあおりも
「健康意識の歴史的シフト」以外でも、最近顕著になってきた若年層を中心としたカルチャー、ライフ・スタイルの変化も指摘されている。
その一つは、「経済的理由」だ。近年、レストランなどで出されるビール、ワイン、カクテルなどの価格は、他の諸物価以上に高騰してきており、一般消費者が外食の際に少しでも出費を抑えようと、飲み物は注文せず、水だけで済ませる人が目立ってきているといわれる。
例えば、ニューヨークやロサンゼルスなどの大都市では、レストランで普通の食事をする際、ジョッキ1杯のビールを注文するだけでも8~10ドルは普通であり、1回あたりの食費は、チップ代込みで30ドル前後は覚悟しなければならなくなっている。ワイン愛好家の間でさえも、レストランではボトルで注文せず、グラス1~2杯で済ませる人が増え始めたと伝えられる。
“アルコール離れ”が特に顕著になってきたといわれるのが、90年代半ばから10年代初頭に生まれた“Z世代”や、81年から96年ごろに生まれた“ミレニアム世代”だ。彼らの世代の間では、深酒や泥酔、二日酔いは初めから軽蔑の対象とされ、パーティで仲間たちと会話を楽しむ際も、“シラフ”で通すことが当たり前のようになりつつある。
ビジネス誌「Forbes」最新号によると、1カ月のうち、「数回以上」、外食する人の数自体は、全体の77%と、従来からほとんど変化ないものの、コスト意識もあってレストランで普通に食事する人は49%に減っており、テイクアウトで済ませる人が多くなっている。テイクアウトの場合、アルコールを買う人はまれだ。
食事の際に、何らかのドリンクを注文する人は依然少なくないが、 健康意識の高まりと相まって、価格の安いノン・アルコール類を好む人も増えている。日本でも、普通のビールは200円程度だが、ノンアルコール・ビールは140円前後で販売されている。
実際に酒類業界では、ビール、ウィスキー、バーボンなどの売り上げは年々、下降線をたどってきており、代わって、「アルコール・ゼロ」のビール、スピリッツ類の人気は高まる一方だ。最新のデータでは、米国内での普通のアルコール類の売り上げは、前年比6%減となったのに対し、ノンアルコール類は逆に18%増と急ピッチで伸びている。
