ところが大学3年の時に、ひょんなことから新幹線を初体験する。英語部の活動で関西に来た時に、部員の1人が急病になり、急遽、帰京の付き添いで新幹線に乗ったのだ。「それから、その快適さが癖になりました。親父に頼みこんで、新幹線の切符代をだしてもらいました。故郷に早く戻れるのもうれしいですが、休みが終わって東京に戻る列車の旅というのは、寂しいものですからね。その時間が短縮されるのもうれしかったですよ」
以来、数えられないほど新幹線に乗ってきた。もともと鉄道に乗るのは好きな性分である。旅が多い仕事ということもあり、アメリカやオーストラリアの大陸横断鉄道にも何度も乗車してきた。最近は中国やヨーロッパを視察する時も、鉄道に乗ることが多い。
「鉄道の旅のいいところは、車窓の景色を見ながら、人とゆっくりと会話できるところ。その国の風土を知るには、最適な交通手段といえるでしょう」
今、岩谷さんが故郷の岡山県に帰る時は、「ひかり」を利用することが多い。シニア世代を対象にした会員サービス・ジパング倶楽部の割引を受けられるのが大きな理由だが、移動にやや時間をかけられる、その「余裕」を楽しんでいる。「今の新幹線にほとんど不満はありませんが、しいてあげれば、食堂車がついていないこと。鉄道の旅は、どこか『ゆとり』が欲しい。それが旅先での新たな出会いにもつながるでしょうから」
時にはビジネスの場に、安らぎの場にと、新幹線には様々な用途が求められている。
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