2022年12月2日(金)

経済の常識 VS 政策の非常識

2014年9月5日

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 図は、自殺者数と失業率の関係を示したものだ。自殺者数には警察庁と厚生労働省と2つの統計がある。どちらもほぼ同じ動きをしているのでより直近の数字が分かる警察庁の数字を使っている(図の2014年の数字は、直近時点までの合計値または平均値)。図から、失業率が上がると自殺者が増加し、失業率が下がると自殺者が減少するという関係が明白である(人口が減少しているのだから人口当たりの自殺者数、すなわち自殺率にすべきだ、また、高齢者の自殺率が高いので高齢化で調整した自殺率を使うべきだという批判があるかもしれないが、そうしてもグラフの形は変わらない。厳密な分析は前掲の澤田他著がある)。

 特に、98年の金融危機による大不況によって一挙に上昇し、それまで2万人程度だった自殺者が3万人に跳ね上がったことが印象的である。もちろん、経済情勢が悪くなってから自殺に追い込まれるまで時間がかかるようであり、原因は経済的問題ばかりではない。しかし、それでも3万人の自殺者が1万人減るという効果がある。自殺をする人々のすべてをどうしたら救えるかはよく分からないが、経済が良くなれば自殺者の3分の1の人は救うことができるのだ。経済が良くなることの恩恵は大きい。

雇用拡大は格差を縮小させる

 リフレは格差も縮小させる。1990年代の前半まで、日本では若者の格差がほとんどなかったのに、90年代末以降、若者の格差が拡大するようになった。そうなったのは、正社員になれた若者とフリーターのままの若者の所得格差が大きかったからだ。正社員同士の格差より、正社員とフリーターの格差の方が大きいから、正社員になれない若者の比率が高まれば、所得格差は拡大する。

 若者が正社員とフリーターに分化した最も大きな理由は、80年代は景気が良くて、90年代以降は景気が悪かったからだ。景気が良ければ、より高い比率の若者が正社員になれ、悪ければ、より低い比率の若者しか正社員になれないし、若年失業者も増える。ところが、2009年のデータでは格差が縮小している。小泉政権下で、不十分ながらもリフレ政策-2001年から06年まで続いた量的緩和政策-が行われて景気が良く、若者の就職状況が良かったことの恩恵が09年でも続いていたからだ。すなわち、景気回復が格差を縮小させたのである(原田泰『日本を救ったリフレ派経済学(仮題)』日本経済新聞社、2014年11月刊行予定、図1-7参照)。

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