ーー伊藤さんのイメージは、行動派の学者であり、国の審議会などで活躍され、テレビでもコメントする気鋭の論客というイメージですが、こういう姿はご自分の「ミッション」として意識されてきたのですか。自分が目指されたものに近いのでしょうか?
伊藤:私は性格的に、自分のところに来たチャンスや変化みたいなものに食らいつくところがあります。つまり好奇心が強いのです。ただ、テレビに関しては、実は最初のうちはお断りしていました。自分はまだ若かったし、テレビで話せるようなことはないと思っていたからです。政府の審議会については、東大にいるといろいろお話があるものですから、お受けしています。
好奇心が強いという点は間違いなく、他の人がやらないような経験もしています。例えば、流通業界に興味を持って全国の百貨店を回り、また世界各地も回って本を出したりしたことなどです。私の人生、そういうことの繰り返しみたいなところがあります。私のことを「ウオーキングエコノミスト」と呼んでくださる人がおられますが、1日のうち30分は一人になって、ひたすら自分は何をやるべきか考える時間を持つようにしています。
ーー東大の優秀な学生を相手にされていると思いますが、最近の学生気質はどうですか。
伊藤:たくましく成長する学生もいますが、受験勉強をやってきて社会的な視野が狭いまま社会に出て、つまずいて苦労している学生もいます。ただこれは東大生に限らないでしょう。ただ昔とずいぶん違うなあと思うのは、いまの学生の方が社会をよく見ているということです。いい意味でも悪い意味でも。最近の学生は外のことを意識して短期留学をみんなよくしますし、伊藤ゼミでは中国の清華大学と毎年、交互にゼミ交流をやっていますが、学生自身がやる気を持って、学生主導でやってくれている。ある意味で社会との接点は増えてきているのかなと思います。実社会をよく見ようということが学生気質にも反映されていますね。ですから、学生のそういう意欲を引き出すために、ディスカッションやディベートなどもよくやります。
ーー学生の議論のレベルはどうですか?
伊藤:高度な議論を引きだすのは大変な部分もありますが、彼らのやる気にちょっと火をつけてやると非常に優秀です。何人かでチームに分けて論文を書くように指示し、仕上がってきたものを見るとなかなか優れている。今の学生はそういう瞬発力をもっています。