メディアから読むロシア

2014年9月11日

»著者プロフィール
著者
閉じる

小泉悠 (こいずみ・ゆう)

東京大学先端科学技術研究センター特任助教

1982年生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了。民間企業を経た後、2008年から未来工学研究所。09年には外務省国際情報統括官組織で専門分析員を兼任。10年、日露青年交流センターの若手研究者等派遣フェローシップによってモスクワの世界経済・国際関係研究所(IMEMO)に留学。専門は、ロシアの軍事・安全保障政策、軍需産業政策など。著書に軍事大国ロシア』(作品社)、『プーチンの国家戦略』(東京道堂出版)、『「帝国」ロシアの地政学』(東京堂出版)。『ロシアの軍事情報を配信するサイト「World Security Intelligence」(http://wsintell.org/top/)を運営。

 「いかなるロシアの部隊も、ノヴォロシア(※親ロシア派が樹立したと主張するウクライナ東部の独立地域)での戦闘任務のために、国家の軍隊として送られてはいない。だが、ロシアの義勇兵、つまり予備役や退役済みの将校や下士官はたしかにそこに居る。フランス、スペイン、セルビアの志願兵がそこにいるのと同じようにね。このことは誰も隠そうとしていない。平和な都市に砲撃を加え、インフラを破壊し、罪もない女性、老人、子供達を殺している部隊(※ウクライナ政府部隊を指す)と戦う戦士達を助けるため、現役の軍人達が休暇をとって参加していることも否定しない。日焼けをする代わりにね」

 「つまり、チェチェンで戦闘経験を積んだロシア将校達のお陰で…」彼は勢い込んで言った。「分離主義者たちは再びウクライナ軍に対して勝利を収めたわけだね」

 「違う」と私は言った。

 それだけではないのだ…

ロシアからやってきたのは義勇兵だけ

 話は長引いた。我々はときに言い争った。我が同僚の立場は、ウクライナ危機がロシアのせいで内戦に発展したという西側の全体的雰囲気によって固められていた(中略)。

 第1の、そして最も重要なことは次の通りである。繰り返しになるが、ノヴォロシアの戦士達を助けるために、ロシアの部隊がドネツクとルガンスクに国家の軍隊として派遣されているということはない。彼らがウクライナ領内に展開しているという説得力のある衛星写真が存在していないことからそれは明らかだ。ウクライナでロシア軍が戦闘に参加している証拠としてインターネット上でNATOが流布している写真は、初歩的だが根強い嘘だ。これらの写真がいつ、どこで撮られたかは明らかでない。そこには位置座標が入っていないし、場所を特定できるものも写っていない。どこかの(アメリカか欧州かの)衛星から撮られた写真は、ロシアとウクライナの国境やその周辺だけでなく、そのほかのどこの場所でもあり得る。

 第2点。正規軍が戦闘状態に入っているとき、個別の戦車隊や砲兵隊が単独で行進したり戦闘配置についているということはありえない。その付近には、左右に予備隊が居る筈だし、後方及び前方には自動車化歩兵部隊、工兵部隊、防空部隊、通信部隊、電子戦部隊、兵站部隊及びその他の現代的な戦闘組織に必要な部隊が居なければならない。そして、それら全ての上空を、航空機とヘリコプターから成る陸軍航空隊がカバーする。敵の上空では射撃に必要な情報を送信する無人機がパトロールし、偵察・攻撃コンプレクスを構成する。

関連記事

新着記事

»もっと見る