たとえば前述の金世紀房地産公司の場合、抱えている29億元の借金のうち、実は15億元ほどが闇金融からの借金である。それ以外の夜逃げした開発業者たちも多かれ少なかれ、闇金融からカネを借りていた。地元銀行による試算では、彼らの借金総額は約92億元(約1700億円相当)に上っているという。しかも、邯鄲の闇金融では、その年間利息は一律30%という吃驚仰天の高い利息がついているのである。
開発業者たちがこれほどの高い金利で闇金融から借金しなければならない最大の理由は、やはり前述のように、政府による金融引き締めの中で正規の銀行がリスクの高い不動産開発に融資しなくなったことにある。正規の銀行がカネを貸してくれないため、やむを得ず闇金融に手を出したわけである。
しかし問題は、闇金融からあれほどの高い金利で資金を借りると、開発業者たちに残される唯一の道はすなわち、不動産価格が暴騰し続け、年間利息30%の借金を返済できるほどの儲けを得ることである。暴利があるうちは何とかやっていけるが、一旦不動産が売れなくなると、巨額の負債を抱えて高い利息の返済に追われる開発業者たちが直ちに悲鳴を上げることなる。その際、たとえば手持ちの不動産在庫を値下げして売り捌いたとしても、闇金融からの借金とその高い利息の返済に足りることはない。だとすれば、いっそのこと、借金そのものを踏み倒して夜逃げするのが最善策となる。
一般市民も抗議行動に
このように邯鄲市の不動産開発業者の夜逃げラッシュは始まったわけであるが、彼らに大量の資金を貸している闇金融にとって致命的な打撃となろう。しかも、闇金融が融資に使う資金の多くは一般市民から調達したものが多いため、貸し出しのカネが踏み倒されると、闇金融に出資している個人投資家たちはいっせいに財産を失うこととなる。
たとえば邯鄲の場合、闇金融に出資している民間人は市民の1割以上であるとの試算もある。金世紀公司から始まった開発業者たちの夜逃げラッシュは当然、邯鄲市全体に未曾有の大混乱を引き起こした。一夜にして全財産あるいはその大半を失った一般市民たちは連日のように抗議行動を起こし、市政府を包囲して「金を返せ」を合言葉に暴動寸前の大騒ぎを演じてみせた。邯鄲市そのものは今、世紀末のような騒然とした雰囲気である。
その一方、夜逃げした開発業者たちが正規の銀行からの借金まで踏み倒しているため、各商業銀行は大変苦しい立場となり、これまでよりいっそうの貸し渋りに走っていることは言うまでもない。そしてそれはまた、不動産市場のいっそうの低迷と開発業者たちのさらなる資金難を招くこととなり、今後夜逃げラッシュはますます盛んになることが予想される。そうすると、正規の金融も闇の金融と共によりいっそうの苦境となって、破綻への道を一直線に走ることになる。
つまり、不動産バブルの崩壊の後にやってくるのは金融破綻であることを、邯鄲の実例がわれわれに教えているのである。