「影の銀行」の破綻で経済破綻は免れず
もちろん、邯鄲で起きていることは邯鄲だけの問題ではないはずだ。今年3月26日、中国新華通信社傘下の『経済参考報』は、中国の金融事情に関する記事を掲載した。金融市場で大きなシェアを占める「信託商品」は、今年から来年にかけて返済期のピークに達し、約5兆元(約82兆円)程度の貸し出しが返済期限を迎えることになるという。
ここでいう「信託商品」とは、正規の金融機関以外の信託会社が個人から資金を預かって企業や開発プロジェクトに投資するものであるが、高い利回りと引き換えに元金の保証はまったくないリスクの高い金融商品。中国の悪名高いシャドーバンキング(影の銀行)の中核的存在をなすのはまさにこれだ。
問題は、返済期を迎えるこの5兆元規模の信託投資がきちんと返ってくるかどうかである。申銀万国証券研究所という国内大手研究機関が出した数字では、全国の信託投資の約52%が不動産開発業に投じられているという。そう、邯鄲の実例でも示されているように、シャドーバンキングという名の闇金融の主な融資対象の一つは結局不動産開発業者なのである。
そしてこれこそが、信託投資だけでなく、中国経済全体にとっての致命傷となる問題なのだ。
本稿の冒頭からも克明に記してきたように、今の中国で、不動産開発業はまさに風前の灯火となっている。バブルが崩壊して多くの不動産開発業者が倒産に追い込まれたり深刻な資金難に陥ったりすると、信託会社が彼らに貸し出している超大規模の信託投資が踏み倒されるのは必至である。邯鄲ですでに起きていることがそれを実証している。
そして前述のように、信託投資の不動産業への貸し出しはその融資総額の約半分にも達しており、今後広がる不動産開発企業の破産あるいは債務不履行はそのまま、信託投資の破綻を意味する。それはやがて、信託投資をコアとする「影の銀行」全体の破綻を招くこととなろう。
しかし融資規模が中国の国内総生産の4割以上にも相当する「影の銀行」が破綻すれば、経済全体の破綻はもはや避けられない。中国経済はただでさえ失速している最中であるが、今後において、不動産バブルの崩壊とそれに伴う金融の破綻という二つの致命的な追い打ちがいっせいにかけられると、中国経済は確実に「死期」を迎えることとなろう。