すると、これまで当選回数で大臣になれたのは、党首の力が弱かった。政権交代がなかった。選挙で勝つために、党首の人気は重要でなかった。弱い党首が、党内の支持を集めるために大臣ポストを配っていた。ごく少数の政策以外は役人任せで良かった。若手議員に配るポストが少なかった、などの事情があったからだ。
安倍総理は、多数の入閣待望組からわずかな人数の人間を引き上げて大臣にするより、そもそも当選回数を積めば大臣になれるという期待を打ち砕いたのかもしれない。女性閣僚を増やしたのもその一環になる。
議員も変わらざるを得ない
すると議員も、大臣になるという目標を考え直す必要があるのではないか。サラリーマンも、長く働けばそれなりに出世できるという世界ではなくなっている。議員の世界も、サラリーマンから四半世紀遅れてそうなったということかもしれない。サラリーマンが、同じ会社での出世より、専門家を目指す、転職、趣味、蓄財など、別の途を考えるように、議員の世界もそうなるのかもしれない。
議員が趣味と蓄財に走られても困るので、専門家、転職を考えることが望ましいだろう。海外の場合、政治家として頭角を現すことができなければ、早期に議員を辞める人もいる。大使に任命される人もいる。外務省には迷惑な話かもしれないが、語学に達者な議員も増えているので、これは良いかもしれない。
もちろん、もっとも重要な、法律を作るという業務に力を注ぐことが望ましいのだろう。戦後直後は、人身保護法、優生保護法(現在は母体保護法)、覚せい剤取締法などの重要な法律が議員立法で制定されている。ところが、保守合同及び社会党の統一、いわゆる55年体制の実現から議員発議法案が減少した。
しかし、90年代後半から変化が見えている。高齢社会対策基本法のような重要な法案が議員立法で制定されるようになっている(山岸健一「立法と調査」№199、97年5月)。00年以降、ストーカー行為等の規制、児童虐待の防止、自殺対策基本法などが、議員立法で制定されている。年功序列は、議員の世界でも変わらざるを得ないということだろう。
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。