2022年10月6日(木)

地域再生のキーワード

2014年12月1日

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磯山友幸 (いそやま・ともゆき)

ジャーナリスト

千葉商科大学教授(4月から)。1987年日本経済新聞社に入社。フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長などを務め、11年に独立。著書に『2022年、働き方はこうなる』(PHPビジネス新書)など。

 資金提供の見返りは、巻末への氏名掲載と完成した本の送付。さらに、屋敷林で採れたタケノコの佃煮や中甚兵衛が使っていた河内扇を模した扇子などを用意し、3000円から5万円の出資を募ったのだ。

 目標額は160万円。実際にやってみるまで、資金が本当に集まるのかどうか、メンバーの誰にも見当はつかなかったという。結果は目標をクリアする173万円。クラウド・ファンディングは成立した。東大阪や河内地区の人だけでなく、東京や静岡などからも資金が寄せられた。地元のたくさんの企業も快く協力してくれた。

 完成した『中甚兵衛物語』は、地域の学校などから問い合わせがあれば、無料で届けている。図書室に置いたり、副読本として使ったりする動きが広がっている。何より、「河内」を売り出すためのツールになっている。

河内に眠る宝を発掘

幸田栄長さんと川中知子さん

 中甚兵衛の漫画本づくりで、幸田さんたちが考えている「町おこし」が終わった訳ではない。出来上がった漫画本の表紙には「郷土の偉人伝シリーズ1」と書かれている。つまり、プロジェクトは「続く」ということなのだ。

 「外国人観光客が増えていて、関西国際空港にもたくさんの人が到着していますが、河内の目の前を素通りですわ。世界の人に河内に寄ってもらえる宝を発掘して、磨かんとあきません」

 幸田さんはそう語る。

 屋敷林では定期的にさまざまなイベントを開催している。「歴史と緑の癒しのサロン」「落語会」「どんぐり拾いと工作教室」「焼き芋」。地域の人たちが集まる賑やかな会合が定着している。だが、屋敷林と中甚兵衛だけでは「河内」を売り出すのに十分ではない。

「河内観光局」の設立に集まった皆さんと

 8月30日、川中邸の広間で、「一般社団法人 河内観光局」の設立総会が開かれた。実は、河内の地は、古代からの歴史資産の宝庫であり、近現代の産業遺産も少なくない。ところが、市町村が分立しているために、そうした資産を十分に生かし切れず、宝の持ち腐れになっていると考えたのだ。

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