2022年7月2日(土)

【緊急特集】エボラ出血熱

2014年11月5日

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村中璃子 (むらなか・りこ)

医師・ジャーナリスト

医師・ジャーナリスト。東京都出身。一橋大学社会学部・大学院卒、社会学修士。その後、北海道大学医学部卒。WHO(世界保健機関)の新興・再興感染症対策チーム等を経て、医療・科学ものを中心に執筆中。京都大学大学院医学研究科非常勤講師も務める。

BSL-4の役割の変化

 とりあえずのところは順調に終わった、エボラ上陸の予行演習。今回は演習で終わったが、次もそうとは限らない。これまで地元が危惧してきたのは、日本にない危険な病原体がわざわざ研究目的で持ち込まれ、施設外にもれること。しかし、いま、危険な病原体のエボラは、研究者によって持ち込まれる危機ではなく、自らが上陸する可能性をもつ危機へと変わった。BSL-4に期待される役割も、「研究」から「国民を守ること」へと大きく変わっている。

 反対運動を行ってきた須藤博・武蔵村山市議会議員(民主党)は、ウェッジ編集部の取材に対し「研究目的と緊急対応は違うと思っている。研究目的は従来通り反対だが、エボラ上陸のような緊急事態となれば、国民の命がかかっているし、稼働の是非についてはよく考えなければならない。ただし、その大前提として、厚労省や感染研には、これまでのようにただ安全だと繰り返すだけではなく、マイナス情報も含めた徹底した情報公開を行うなど、十分に地元とコミュニケーションを図ってほしい」と答えた。

 先進国では渡航者や医療関係者以外からエボラ患者が報告されていないことからもわかるように、今のところエボラは、他人との距離が遠く、医療制度の整った環境の一般人では流行しづらい病気。そのようなエボラという病気の性質に助けられ、今回は、BSL-4が稼働していなくても事なきを得るかもしれない。しかし、今回エボラ上陸がないとしても、エボラが上陸したところで流行しないとしても、エボラにかわる別の感染症の危機は必ずまた訪れる。人類とウイルスとの関係はそういうものだ。時として、新しいウイルスが地球上に現れ、古くからのウイルスも遺伝子変異を遂げて、忘れたころに人類を脅かす。日本だけがこの脅威から例外的ではないことをしっかりと受け止める必要がある。周辺住民の意識が変わり、「予行演習」を済ませたいまが、エボラを含むウイルスの脅威に備えBSL-4を稼働させるよい機会だ。

(注1) 正確には、疑い患者の臨床検体の取り扱いについては法的な基準がなく、感染研の規程でBSL-2以上、エボラウイルスのようなリスクの高い病原体が疑われるものはBSL-3以上と定められている。

(注2) BSL-4の正式稼働のためには、厚生労働大臣による一種病原体等取扱施設の指定が必要。

(注3) F. Lamontagne et al., Doing Today’s Work Superbly Well —Treating Ebola with Current Tools, NEJM, 371;17, Oct 23, 2014

  
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