2024年12月14日(土)

オトナの教養 週末の一冊

2014年11月14日

――学歴に関しては、ある人の行動を知るには、その人の学歴が重要だと書かれています。これはどういうことでしょうか?

吉川:その人の生活の様子や、「社会の心」がどうなのか考えるとき、一昔前なら年齢によって大きな考え方の傾斜がありました。戦前生まれや戦中生まれの祖父母の世代とは受けた教育も、戦争体験も全く違うというような状況です。しかし、高度経済成長後の日本人はそれなりに豊かな水準で、変化の少ない暮らしを継続してきましたから、団塊の世代とその孫を比べてみると、世代ごとの人生経験の違いによる傾斜が以前ほど大きくはありません。

 また、職業に関しても、一昔前ならば、終身雇用でずっと同じ会社で働いている人の愛社精神が強い、というように仕事がアイデンティティとなり、その職業らしい人になりやすかった。でも、現在いわれているように仕事も会社もどんどん変わるとなると、そうはなりにくい。

 また、この国には欧米諸国のような白人とそれ以外のエスニシティや、カソリックとプロテスタントというような強烈な社会集団の境界がありません。さらに言えば、イギリスやフランスほどには階級がハッキリしているわけでもない。

 そうしたときに、何が人の行動を予測する要素となるかを、この30年間で見比べると、世代や仕事などは指標として弱くなって、学歴の影響力だけが伸びているのです。言い換えれば、お金や仕事の問題は、こと日本社会においては、学歴をベースにしてそのうえに乗っているのです。社会のハードウェアの根幹に学歴があって、学歴以外のものが人の行動を予測する力を強くもたないのが現代日本社会の特徴です。

 そしてもうひとつジェンダーへの目配りも大切です。一昔前には男女間にあってはならないような違いがありましたが、その男女の違いは今、学歴の水準をはじめとして多くの点で、時代を追うごとに小さくなっています。だから私の調査したデータでは、現在では若い女性の考え方は男性よりも先進的で、文化的な活動の部分ではむしろ女性のほうが積極的になっています。

――学歴で明確に好みがわかれるものはありますか?

吉川:プレミアム商品です。お金を持っている人が買うのかなというイメージがありますが、このコトバに反応しているのは、お金があるかどうかや会社で昇進したかどうかではなく、それらの要因の影響力をコントロールしても、大卒層がプレミアム商品を好む傾向が残ります。逆に非大卒層はこの言葉には強く反応しません。つまり、「プレミアム」は消費者の中から大卒層を選び出すはたらきをもつキーワードになっているのです。


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