2024年12月26日(木)

オトナの教養 週末の一冊

2014年10月2日

 子育て支援や少子高齢化などが政治問題になるが、一方で所用のため仕方なくベビーカーで公共交通機関を利用したり、幼い子を飛行機に乗せれば厳しい意見が向けられることも少なくない。ひと時も目を離せないわが子を抱え、子育てに奮闘する親は一体どうすればいいのか。さまざまな子育て論が世間に溢れている中、『子育ての哲学』(ちくま新書)を上梓した山竹伸二氏に「現在の母性や父性」「子育ての本質」などについて聞いた。

ーーまず、現在の子育てを取り巻く問題点をどう考えていますか?

山竹:私も子供が生まれてから、すべてが子供を中心に人生が回り始める感覚がありました。いまのお母さんたちの多くは、昔と異なり、子供が生まれるまでは働いたり自分の好きなことをしたり、比較的自由に生きてきた人が多いと思いますので、育児で自由が奪われ、自分の時間が持てなくなってしまうという感覚は尚更でしょう。また、昔のように大家族で、地域のつながりが強かった時代なら、家族や近隣の人たちに子育てを手伝ってもらったり、いろいろ相談することもできたでしょう。しかし、いまはそういったことが難しい状況ですし、特に都市部のお母さんたちは孤立しがちです。

 『子育ての哲学』には、子供の感情を受け止めたり、ほめたりすることの重要性を書きましたが、それができるからといって、はたして“お母さん力”が強いと言えるのかどうか。経済的に貧しかったり、他に心配事を抱えているようなお母さんたちは、つい怒ってしまったり、なかなか力を発揮することができないでしょう。子供の感情を受けとめるにせよ、子供の言動をほめるにせよ、心に余裕がなければうまくいきません。だからこそ、もっと母親を支援するような社会の仕組みが必要になっているのです。

ーーそういう状況であるにもかかわらず、未だに「子どもは母親が家で育てるべきだ」という意見が多いですね。

山竹:確かに、私より上の世代では母性信仰が強いですし、「幼稚園ならまだしも、保育園に一日中預ける母親はどうなのか」というような意見もよく聞かれます。こうした保守的な考え方は、子育て支援や待機児童の解消を掲げる政治家のなかにもたくさんいますので、保育園という箱は増やせても、中身の充実はあまり期待できないと思います。


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