2024年4月24日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年11月17日

 大統領は、「イスラム国」と戦うにしても、アジアの同盟国を安心させるにしても、選択肢を保持しておかねばならず、国防省は米国の国益を守るための最善の代案を提示する柔軟性を必要としている、と述べています。

(出典:Michèle Flournoy&Eric Edelman ‘Cuts to defense spending are hurting our national security’ (Washington Post, September.19, 2014))
http://www.washingtonpost.com/opinions/cuts-to-us-military-spending-are-hurting-our-national-security/2014/09/18/6db9600c-3abf-11e4-9c9f-ebb47272e40e_story.html

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 国防諮問委員会は、今春発表されたQDR(4年毎の国防見直し)2014の妥当性を検証するために設置された超党派委員会です。今回は、ペリー元国防長官とアビザイド元陸軍大将(元中央軍司令官)が共同議長を務め、この論説の筆者、フロノイとエーデルマンもメンバーに加わっています。

 彼らが共通して主張していることは、米国防基礎予算の規模を2011年にゲーツ長官が提唱していたレベル(約5700億ドル程度)にまで回復させよ、ということです。今年度(2015会計年度)の国防予算は、2013年末に議会で合意された超党派予算法によって、強制削減の緩和措置がとられてはいるものの、基礎予算は約4900億ドルの拠出しか許可されていません。しかも、強制削減緩和措置が適用されるのは、2014~15会計年度の2年間のみであり、このまま何らかの追加的救済措置がとられなければ、2016会計年度からは、完全な強制削減が再発動されることになります。

 仮に、2016会計年度から強制削減が再発動された場合、全体の国防予算規模は、2019会計年度までに総額1150億ドルの削減がなされ、調達・研究開発といった、軍の近代化に関する予算は58%減、即応性・運用維持予算も35%減となります。そして、F-35Aを含む、海空軍の重要装備の調達を削減する必要に迫られます。こうした調達計画の停滞は、当然、米海空軍の前方展開戦力に支えられているアジア太平洋地域の安全保障環境に悪影響を与えることになります。それゆえ、国防諮問委員会の提案は、我が国としても、至極妥当なものとして、歓迎できます。

 この問題についての見通しとしては、楽観視できる材料も少しずつ出て来ているように思います。まず、米国の景気は上向いており、財政赤字は縮小傾向にあります。中間選挙で大勝した共和党の中には、財政健全化を第一とする、財政保守派も含まれますが、そういう人々が国防費削減の見直しに同調しやすくなったことを意味します。そして、オバマは「イスラム国」を弱体化させ殲滅するとして、空爆に踏み切り、オバマ政権としても国防予算を手当てする必要が生じています。そういうことが、強制削減見直し論につながっていく可能性はあります。

  
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