オバマが言ったように、アジアにおける民主主義の発展が重要なのだから、香港の「雨傘革命」の成功は、米国の優先的課題でなければならない。それは、アジアにおいて追求すべき、戦略的に重要な課題である、と述べています。
(出典:Michael Mazza ‘Obama's Inconsistency on Hong Kong’(National Interest October.6, 2014))
http://nationalinterest.org/blog/the-buzz/obamas-inconsistency-hong-kong-11413?page=show
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香港情勢は膠着状態に陥っているように見えます。香港当局と学生指導グループは妥協策をめぐり、「対話」を続けていますが、話し合いは曲折を続けているようです。
オバマ大統領は、10月1日に、スーザン・ライス補佐官と王毅外相との会談に同席し、「香港情勢を注視している」と発言しましたが、マッザはこの論説で、それではまだ不十分であり、「自由、民主主義、人権を擁護する」という、より明確な姿勢を打ち出すべきである、と指摘しています。自由、民主主義、人権を擁護するという、米外交の王道に則った、正鵠を射た論旨です。日本としても傾聴すべき内容です。
ただし、例え米国が、これらの基本的価値を擁護する強い姿勢を打ち出したとしても、「西側資本主義の論理であり、中国の体制転覆を図るもの」として、内政不干渉を唱える中国に対しては、それほどの効果を持たないでしょう。習近平政権は、「社会主義革新的価値観」を掲げて、西側の主義主張に対抗しようとしており、共産党中央組織部は、幹部たちに対して、欧米の思想は「騒音」である、と通達しています。さらに、昨年話題となった、国防大学や人民解放軍総参謀部が制作に関わったとされる、反西側プロパガンダ映画『較量無声』(静かなる競争)は、香港を、中国の不安定化を目論む米英の拠点と位置付けています。
誰が見ても納得しがたいのは、50年間の「一国二制度」を認めた中英間の基本合意(第5条)を破棄し、国際約束を一方的に反故にしようとする、中国の独善的行為です。法治主義に違反する点を強く指摘することが、米国のみならず、英国や日本にとっても、より効果的な共通の課題でしょう。
今後の学生デモの帰趨については、はっきりしない点が多くあります。一般市民の生活に支障を来すとの香港内部の反応や、学生たちの疲労状況も考慮する必要があります。中国、香港当局は、それらに期待しているようです。ただし、将来の自由、民主のない生活に危機意識を抱く青年たちの動きが、近日中に霧散霧消するとは考え難いです。そのような状況を考慮すれば、やがて時期を見て、中国、香港当局側が強圧的手段を用いて彼らを排除する動きに出るということもあり得るでしょう。特に、APEC首脳会議が終わった後、そういう危険性は高まっていくと思われます。
なお、マッザが、中国当局、香港当局がより強圧的な対応に出た場合の対抗策として挙げている中で、中国の独禁法違反への措置、新疆の人権侵害調査は、香港問題とは関係なく実施すべきものでしょう。
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