2024年12月5日(木)

今月の旅指南

2009年7月30日

太鼓橋が上手に上がった年は神々により豊作が約束されるとして、現場は観客も一体となって熱気に包まれる

 幕末に黒船が来港したことで有名な下田。港町としての歴史はそれよりずっと古く、江戸時代初期には3000艘もの船が出入りし、「伊豆の下田に長居はおよし 縞の財布が軽くなる」と唄われるほど繁栄していたという。そんな下田の夏を代表する祭りが、下田八幡神社の例大祭「下田太鼓祭り」だ。 

 「県外で働いている人もこの日だけは必ず帰ってくるほど、地元の人たちに愛されている祭りです。観光イベントと違い、昔ながらの伝統を守り継いでいるんですよ」

 と教えてくれたのは、下田太鼓伝統保存会会長の倉田好道(よしみち)さん。なんでも、江戸時代初期、長い戦乱と度重なる災害で荒廃していた人心を1つにするため、下田奉行の今村伝四郎が始めたのだとか。また、一説には、大坂夏の陣で大勝した徳川軍が大坂城に入城した際、徳川の威風を宣揚するために打ち鳴らした陣太鼓を模したともいわれているそうだ。

 祭りが行われるのは8月14日と15日の2日間。下田八幡神社を起点に、神輿(みこし)や各町内から出された供奉(ぐぶ)道具・太鼓台(太鼓をのせた台車)が町へ繰り出し、笛や三味線、太鼓を打ち鳴らしながら1日中、町内を練り歩く。供奉道具とは、榊や鉾などの飾りをつけた四角い箱のことで、これを若者が4人で担ぎ、神輿に先立って通りを練り歩く。

 「その途中、町の辻々で各町内の供奉道具を連結してアーチ型の太鼓橋をつくります(写真)。祭りの中で最も盛り上がるのがこのシーン。組み上がった重い橋を押し上げるさまは豪快ですよ」

 このほか、すべての太鼓台が集まり、笛・太鼓・三味線をそろって演奏する「揃い打ち」(14日夜)や、町内を練り歩いた神輿・供奉道具・太鼓台が神社に勢ぞろいする「宮入り」(15日夜)も見逃せない。

 太鼓の打ち方には、「岡崎」「さん切り」「若竹」「たかどろ」の4種類あるが、これも今村伝四郎が定めたものだとか。祭りが近づくと、太鼓や笛を練習する音が連日、町内に鳴り響くという。夏の下田は祭り一色だ。

下田太鼓祭り
静岡県下田市・下田八幡神社(伊豆急行線伊豆急下田駅下車) 
〈問〉下田市観光協会 0558(22)1531
http://taikomatsuri.nomaki.jp/

◆「ひととき」2009年8月号より

 

 


 

 

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