うつ病蔓延時代への処方箋

2014年12月22日

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 以前は、自分のために使う時間もなく忙しく働くことが幸せだと感じていました。多くの人との出会いと、多様な人間関係を築くことは喜びだし、こんな刺激的な生き方はないと信じきっていたのですね。それが自分を軸に多様な関係を立て直すべきでは、と思うようになりました。何でも手を出し、取り組み過ぎたのかもしれません。

 ここまでの間、自分の手で開けたすべての窓をこのまま開け放し続けていいのか。最後まで開けておきたい窓のためにも、いくつかの窓は閉めないといけない。誰かに閉じられる前に、勇気を出して閉じてみるのです。それは終わらせるということではなく、次への出発です。とてもエネルギーのいることなのです。

 例えば、山口百恵さんは引退しましたが、あれほどの大スターですからやめることで一時的に仕事を失う人たちがいたと思います。申し訳ないという気持ちを持ちながらも、彼女はマイクを置き、主婦という次の道に進んだのです。自分が望んだ道を選んだからには、再びそこには戻らない。そして望んだ新しい人生。それもまた「閉じる幸せ」でしょう。

力あるうちに閉じるべき

―― 職場うつの人は、職場での悩みが要因ですから、「閉じる」ことを薦めると会社を辞めることを推奨しているように捉えられる懸念があります。そうではなく、著書でも触れられていますが「棚卸し」という考え方が、この場合には相応しいと思うのですが。

残間:人には会社だけでなく家族、友人と、属している社会があります。そこにはそれぞれ役割があるはず。それもあまり固定化して考えずある時期には閉じてもいいと思います。ただし、いきなりバシッというのではなく時間をかけてやることが大事。多様な関係性で悩んでいるのだから、ひとまず棚上げして、その後に棚卸しすればいい。親子関係でも会社でも、一度距離を置いてみれば、冷静になれる場合があるでしょうし、次の展開への準備もできると思う。

 ここで言う「役割」とは、夫であったり、妻であったり、娘、社会人、会社員など誰でも必ずあります。その役割を振り返ってみて、強弱つけるのでも、最優先の札をつけるのでもいい。全部をしっかりとやろうと思うことが無理だと気が付いた時に、自分が歩くべき道が拓けてくるのだと思います。気づいても、まだ閉めたくない、まだ可能性があると思うこともあるでしょう。でも勇気をもって閉じてみると、次の扉を開ける力が湧いてくるものなのです。

―― 「孤独を味方につける」ことも書かれていますね。

残間:閉じることは独りになる覚悟が必要だと考えています。閉じる行動の最初は、自身を見つめ直すこと。何をやりたいのか、何ができるのかを自分に問いかけることです。自問自答することは独りになることで、見つめ直した自分を外に出すのが次の段階になるのです。独りになることは後ろ向きでも世間から離れてしまうことでもない。

 抑うつ状態の人たちの多くは、孤立感をものすごく恐れている。だからあえて「孤独を味方にしよう」と思ってほしい。孤独は怖いことではない。その次には明るい光が待っています。

  
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