國松:スイスが受け入れている外国人の数は約186万人。スイス全居住者の約23%は外国人という勘定になります。これは、ヨーロッパ各国のなかでも、群を抜いて多い。これに対して日本国内に居住する外国人の数は約206万人。全人口比では1.6%に過ぎません。
逆に、海外に居住するスイス人は60万人~70万人と聞きました。これは、スイスの人口の約10%にあたります。これだけの人々が、海外に進出して活躍しています。こうした海外のスイス人をつなぐOSAスイス海外協会という強力な組織があって、彼らをサポートしています。これに対し、海外に居住する日本人の数は、およそ120万人で、全人口の1%にも満たない。日本はよくその「内向き志向」を指摘されますが、スイスに比べれば、海外進出率は、10分の1ということになります。
ブーヘル:スイスのスタンダードからみれば、日本の移民問題は、まだないに等しい。これからの問題です。スイスのよい経験と悪い経験の両方を参考にされたらよい。それから、海外進出率のことですが、スイスでは海外に行く経験を持つのはごく普通のことです。若い人たちが、旅行だけでなく、1~2年海外で勉強するというのは一般的で、そうした海外経験をプラスに評価します。ところが、日本で話を聞いていると、学生の時に1年海外に行ったりすると、1年を無駄にしたように受け取られるといいます。40歳になるまで外国を見たことがない人が、本当に外国の人たちを尊重できるはずはありません。
私の息子は14歳の時に6週間インドに行き、16歳では6週間ブラジルで過ごしました。そして高校を卒業すると南アフリカで3カ月生活した。今、彼は米国で勉強しています。私は彼に海外に行くことによって、同時にスイスをより理解してもらいたいと思っています。今は、日本政府も海外留学を後押しする制度を始めたようですが、これは非常に重要なことだと思います。
スイスも日本も伝統を重んじる国民ですが、古い考えに凝り固まるのではなく、発想を変えていかなければなりません。
(構成/磯山友幸 写真/井上智幸)
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