2024年11月21日(木)

日本の漁業は崖っぷち

2015年1月5日

20年かけて資源回復したカナダ東海岸のマダラ

 乱獲により資源を破壊してしまったことを自覚し、約20年もかけて資源を回復させた例としてノルウェーニシン(第3回参照)をあげましたが、同じく乱獲により資源を破壊してしまった後に、実質的に禁漁措置を設けて資源回復を行ってきた例として、カナダ東海岸のマダラがあげられます。

 1992年にカナダ政府は400年続いていたマダラ漁の禁漁を決めました。その際に約3万人以上の人が職を失い、カナダの歴史の中で最大のレイオフ(一時解雇)と言われました(第9回参照)。資源の低迷は20年以上続いて来ましたが、このたび2014/2015年シーズンの漁獲枠を前期比15%増の13,225トンに設定。15年ぶりの増枠となりました。

 ゲイル・シアー漁業海洋相は「政府は大西洋カナダのタラ資源再建の重要性を十分認識している。今回の計画は経済効果の造成と同時に、未来の世代に向け資源の長期的持続性を維持するもの」と述べています。一旦傷めつけ過ぎてしまった資源は、これらのように回復までに数十年かかります。ましてや、ウナギのように国際資源保護連合(IUCN)のレッドリスト入りしてしまった魚については、回復できるかも含めて、どれだけの年月がかかるかはわかりません。重要なのは、資源が崖っぷちであり、その原因が「乱獲」にあると一刻も早く理解して、科学的根拠に基づく対策を取ることなのです。

 日本のマダラ漁の例ですが、写真(2014年12月10日付河北新報)は青森県むつ市 脇野沢のマダラ漁の幕開けを告げる「場取り」の様子です。底建網を満載した20隻が、漁場を目指して一斉スタート。陣取り競争です。漁船や漁業者毎に個別割当を行わない限り、この競争も避けられません。漁は1989年に1,300トンを記録した後に、減少し2005年はわずか7トン。2013年は44トンの漁獲だったそうです。

 これからも、本来もっと持続的に漁獲できていたレベルより低い量で、前年比で「獲れた、獲れない」という話題が続いていくのでしょう。たくさん獲れていた時期に「将来もマダラ漁を持続させていくためには、どれだけの親魚を残すべきか?」といった科学的な分析が行われていれば、減り始めた時に「ストップ」がかかり回復待ちとすることができていたのだと思います。


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