「選手としてのパフォーマンスはこれでギリギリです。完全燃焼していないことにも気づきましたので、もう次はないと腹をくくりました。チームワークが良いので団体戦は最初からいけると思っていました。むしろ個人戦にプレッシャーを感じていたのですが、それまで勝ち続けていたので自信めいたものがあったのでしょう。驕りではなく、いろいろな経験から得た自信です。ですが、一番の要因は皆さんが背中を押してくれたおかげです」
2012年世界剣道選手権イタリア大会、大将として出場した高鍋は団体戦で優勝し、個人戦でも世界の頂点に立った。
日本代表は勝って当然と言われる。勝利の喜びを表現することも許されない。剣道が終わりのない人間形成の武道であることを世界に示さねばならないからだ。
この道を志す者たちは勝っても負けても、その歩みを止めることはできない。
国内最速の面を持ちながらも、高鍋はけっして早熟の天才ではなかった。厳しい稽古による知・心技体の研鑽を積み、何があってもけっしてその歩みを止めなかったからこそ、頂点へ立つことが出来たはずだ。
高鍋の静謐な佇まいは深く刻まれた忍耐の歴史に他ならない。
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