連邦政府の直接的な支援もある。一つは税額控除だ。太陽光、太陽熱発電設備を導入すれば、税還付を受けられる制度が導入されている。還付率は30%だ。さらに、補助制度もある。米国の太陽光、太陽熱設備の競争力を向上させ、20年までに発電コストを1kW時当たり6セントにすることを目的としたエネルギー省のサンショット・イニシアティブだ。
毎月のように本補助制度に基づく支援策が発表されている。例えば、昨年12月には太陽光発電技術の信頼性、耐久性向上の研究開発プロジェクトに900万ドル(11億円)、今年1月には製造技術改善に4500万ドル(52億円)、地域での太陽光プロジェクトに1400万ドル(16億円)、2月には太陽光導入の政策、市場の障害をなくすために1300万ドル(15億円)の支援策が発表されている。
中国企業の苦悩
供給過多による過当競争のため中国企業の収益は低迷している。大手のトリナ(Trina Solar)の13年決算は、出荷数量258万kW、売り上げ17億7000万米ドル(2070億円)、純損失7,790万米ドル(91億円)だった。インリーグリーン(Yingli Green Energy)の14年第3四半期の出荷は90万3000kW、売り上げ5億5000万ドル(640億円)、純損失2000万ドル(23億円)だった。政策の転換が行われている欧州市場の成長には期待できず、成長が続く米国市場では課税が実行されることになり、中国企業の苦悩はさらに続くことになりそうだ。
そんななか驚異的な利益率の太陽光発電関連企業がある。香港市場に上場する漢能太陽能集団(HTF)だ。オーナーである李河君会長は、昨年のフォーブス誌では中国第5位の富豪とされていたが、2月3日に発表された中国胡潤研究院の発表では、アリババの馬会長を抜き1位となった。資産額は260億米ドル(3兆円)だ。
HTFの親会社は非上場の漢能集団だ。同社は水力発電、風力発電などに加え、薄膜太陽電池の製造、太陽光発電プロジェクトなども手掛けている。HTFは薄膜太陽電池を製造する機器を製造販売する企業だ。1月28日付け英フィナンシャルタイムズ紙は一面トップでHTFの経理は尋常ではないと報じた。
世界一位の太陽光企業の実態は
フィナンシャルタイムズ紙によると、漢能集団は市場価値で世界一の太陽光関連企業だ。上場子会社HTFの市場価値は180億米ドル(2兆1000億円)と報じられている。殆どの太陽光関連企業の株価はこの1年間で下落しているが、HTFの株価は急上昇しており、14年1年間で3倍になった。
フィナンシャルタイムズ紙の調査によると、HTFの2010年からの売り上げ148億香港ドル(2200億円)のほぼ全ては、株式の73%を保有する親会社漢能集団への機器販売によるものだ。そのうち35%は決済されているものの、残りは未収金で計上されている。要は、支払いは行われていない。12年のHTFの売り上げは3億4700万米ドル(400億円)だが、フィナンシャルタイムズ紙の調査によると、同じ年親会社のパネルの売り上げは5000万米ドル(59億円)しかなく、しかも赤字だった。要は、売り上げは親会社向けにあるが、大半の支払は行われておらず、本当に利益が出ているのか怪しいということだ。