2024年12月27日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年2月24日

 米印両国は、戦略的に接近している。米外交でのインドの低い位置づけ、インド側の対米不信がこの接近を遅々たるものにしてきたが、両国は接近を加速させている、と述べています。

出典:Ankit Panda,‘9 Takeaways on US-India Ties After Obama's India Visit’(Diplomat, January 26, 2005)
http://thediplomat.com/2015/01/9-takeaways-on-us-india-ties-after-obamas-india-visit/

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 この論説は、1月のオバマ訪印に際して出された共同声明及び共通ビジョン文書の要点を紹介したもので、今回のオバマ訪印の成果について、必要な情報を与えてくれます。

 オバマ訪印には、かねてより高い期待が寄せられていました。共同声明、共通ビジョン文書の内容からも、米印関係は順調に進展しているのは一目瞭然と言ってよいでしょう。

 経済面では、共同声明が目指すとしている投資協定は、米印関係進展にとり重要であることは言うまでもありません。さらに、WTO下での貿易円滑化協定(TFA:税関手続きを含む貿易関連の手続きを簡素化し、物流の迅速化、コスト削減を図る)について、昨年11月に米印間で合意が成された結果、WTOで採択できたという大きな出来事もありました。この件は、モディ政権が自由貿易に前向きに取り組む姿勢を示していると同時に、米国の対印配慮も示していると見ることができます。

 今回の訪印では、懸案であった民生用原子力協力についても進展が見られたようであり、米印関係の強化を印象付けています。2007年に米印両国間で結ばれた非軍事原子力協力協定は、米国がNPT非加盟国と協力するという画期的なもので、米印関係強化の象徴とまで見られたものでした。しかし、インドの原子力賠償法が、原発の事業運営者だけでなく、設備機器のメーカーに供給者としての責任を求めることを認めているため、米国企業と米政府が難色を示し、米印協力によるインドでの原発の建設は進んでいません。米印両首脳は、保険という形でこの問題を解決することを目指すとのことであり、進展が期待されます。

 そして、戦略面でも米印関係は、歓迎すべき方向に大きく転換しつつあります。インドは、非同盟主義の伝統を抱えていますが、モディ首相には、この非同盟から脱却しようとする努力が見られます。その結果、民主主義的価値を日米と共有する面が強く出てきています。

 特筆すべきは、米印が戦略的パートナーシップの強化を謳う際は、昨年9月のモディ首相の訪米の時もそうでしたが、日本を協力の枠組みに含める点です。日印は、冷戦時代も含め、一貫して相互に良好な感情を抱いてきました。米印ともに、戦略上の要請に加え、こうした点にも日本の価値を見出していることは間違いないでしょう。また、米印首脳会談で、アジア・太平洋でのパートナーとして日本を重視していくことが明言されるのは、当然、日本の意向が反映されていると見るべきです。日米印の協力強化を通じて、インドの外交戦略の転換を奨励していくことが、中国の台頭を踏まえ、バランス・オブ・パワーを形成していく一つの重要な要素になります。それは、安倍総理の言う「セキュリティ・ダイヤモンド構想」の一環に他なりません。

  
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