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2015年3月9日

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佐々木智弘 (ささき・のりひろ)

防衛大学校人文社会科学群国際関係学科准教授

1994年慶應義塾大学大学院前期博士課程修了。日本貿易振興機構アジア経済研究所東アジア研究グループ長を経て、2014年2月から現職。共著に『習近平政権の中国』(アジア経済研究所)、『現代中国政治外交の原点』(慶應義塾大学出版会)。

環境法制の整備と地方指導者の責任

 「約談」という行政行為は決して目新しいものではない。例えば2010年後半から2011年初頭にかけてインフレ状況にある中、大手のインスタントラーメン製造企業が原料の高騰を理由に値上げをしようとしたが、国家発展改革委員会(発改委)が消費者の混乱を理由に企業と「約談」を行い、企業に対し原料の小麦などの国家備蓄分の優先買付権を与えることを条件に値上げの撤回を求めた。企業は発改委の要求を受け入れた。この時は行政指導とはいえ、発改委と企業の取引に近いものがあった。

 しかし今回の「約談」は報道によれば、事前に環境保護部が調査を行い、市長ら責任者に企業の違法性を示すデータを示し、改善要求を提出し、両者のあいだで議事録を交わし、市長らに要求の実現を約束させるという大変厳しい行政指導であることが分かる。

 その背後には、昨年2014年に改正された「環境保護法」は地方政府が当該地の環境の質に対し責任を負うことを規定し、同年制定された「環境保護部約談暫定方法」は環境保護部が環境保護の責任を履行していない地方政府の責任者に対し「約談」を実施することを規定している、ということがある。今回の約談はこれらの規定に基づき実施された。同年11月の18期4中全会での「法に基づく国家統治の決定」も後押したものと思われる。

「約談」の変化
企業への行政指導から地方政府への行政指導へ

 これまでの「約談」は、中央官庁の企業に対する行政指導だったが、今回は中央官庁が地方政府に対し行政指導を行ったという点で大きな転換と言える。

 「焦点訪談」のキャスターはこれを「『企業監督』から『政府監督』への転換である」と述べ、次のように解説した。

過去には環境保護部門だけが車を止めることに関わり、地方役人はアクセルを踏み込むことに関わる(成長重視―筆者注)だけだった。現在では地方の政策決定者と環境保護部門がいっしょになって環境汚染に対し車を止めなければならない。このような環境保護の新方式が功を奏すかどうかは現地の環境に対するガバナンスの効果を見なければならない。約談はなお「口を動かす」ことにすぎず、真に環境保護問責メカニズムを実際に機能させなければならない。「手を動かす」必要がある。罰すべきは罰し、免除すべきは免除する。汚染に対するガバナンスは政府自らが責務を当然引き受けなければならない。

 上記の劉主任は「焦点訪談」の中で次のように語っている。

「企業が具体的に行動しない場合、上級組織である環境保護部門に言っても効果がない。市長自ら組織的に改善していくことで効果が出てくる」

 環境保護部が企業に行政指導しても成果が出ない。それならば地元政府のトップのリーダーシップによって企業に行動させようという環境汚染を食い止めるための環境保護部の戦略転換と言える。

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