2022年11月27日(日)

都会に根を張る一店舗主義

2015年3月31日

»著者プロフィール
著者
閉じる

島村菜津 (しまむら・なつ)

ノンフィクション作家

東京藝術大学美術学部芸術学科卒業。卒業後イタリアへ留学。十数年にわたって取材したイタリアの食に関する『スローフードな人生!』(2000年、新潮文庫)が日本のスローフード運動の先駆けとなる。近著に『ジョージアのクヴェヴリワインと食文化』(17年、誠文堂新光社)。
 

 そしてこの店は、目下、日本中でただ一軒、鳴子の米、ゆきむすびだけを扱う店なのだ。

 その鳴子の米は減農薬で、わざわざ手刈りし、地元の方言ではほんぎゃと呼ぶ杭かけによる天日干しをする。大変な手間だが、そうすることでいっそう米がおいしくなるのだという。そのほんぎゃの大判写真が貼られ、壁には、鳴子の米づくりの四季を綴る写真を展示、棚には鳴子こけしが並び、テーブルにも、鳴子温泉のパンフレットが置かれていた。

店の奥には、鳴子の地元では「ほんぎゃ」と呼ぶ稲の杭がけの場面。そのとなりには、鳴子の名物、こけし。鳴子の米づくりの様々な場面も展示されている

 この店で、ゆきむすびを味わった人には、ぜひ、一度、鳴子温泉に足を運ぶことをお薦めしたい。かつては、近郊の米農家の湯治場として栄えた歴史を持つ温泉場にとって、鳴子の米プロジェクトは、農家への恩返しでもある。先の旅館『みやま』や『大沼旅館』などにも、連泊しやすいいわば裏メニュー、湯治値段がある。そして、炭酸泉の美人の湯から、火傷の治療に通う蛇の湯まで、多様な泉質を巡ることもできる。そして、農家レストランや商店街の店を含め、ほとんどの旅館で、地元の「ゆきむすび」を味わうことができる。

  
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。

新着記事

»もっと見る