サイバー空間の権力論

2015年3月16日

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塚越健司 (つかごし・けんじ)

拓殖大学非常勤講師

1984年生。専攻は情報社会学、社会哲学。著書に『ハクティビズムとは何か』(ソフトバンク新書)、共編著に『「統治」を創造する』(春秋社)、など。TBSラジオ『荒川強啓デイ・キャッチ!』火曜ニュースクリップ担当としてレギュラー出演中(http://www.tbsradio.jp/dc/)。

 番組では2015年の現象も伝える。ビッグデータからヒットする楽曲が予測され注目を浴びたアーティストが、それに応えて次の曲作りに悩む姿。死んだ人の生前の音声、画像、動画、発言内容からコンピュータ上に故人を再現しようとする研究に、亡くなった夫のデータを提供する妻の姿。人間の心を理解し、同時に相関関係から確率論的に未来を予測する人工知能は、我々を幸せにするのか、そうでないのか。こうした議論は常に行われている。

 筆者は人工知能が相関関係から未来を導くと述べた。とはいえ、実際我々の人生は常に相関関係で生じているといえるだろう。偶然ある場所にいたことである人に出会う確率が高まる。どのタイミングで誰と出会うか、それらは結婚ですら相関関係で決まっている。すなわち、結婚するにしても「この人でならなければなかった」理由は本来的には存在しない。しかし、人は相関関係を因果関係で捉えようとする。試験に落ちれば過去の勉強量不足を原因とした因果で捉え、成功すれば過去の努力を因果でとらえる。だが「〜をしたから〜になった」といった因果関係が、実際にはすべてを捉えることは不可能であるばかりか、世界のほとんどは相関関係でできている。それでも人は、因果で捉えなければ自身を納得させられない。

 人工知能が発達し、相関関係で捉えられた未来に我々は納得できるのだろうか。いや、しかし、こうした想定もまた因果関係で物事を捉えているからにほかならないのではないか。30年後の未来では、相関関係で物事を捉えることに人間がマインドチェンジしているかもしれない。その時代に適合した生き方を我々は選択するかもしれない。現時点で言えることは、人工知能はそれほどに、我々の生活、人生、哲学にまで影響を与えるということだ。

  
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