サイバー空間の権力論

2015年3月16日

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塚越健司 (つかごし・けんじ)

拓殖大学非常勤講師

1984年生。専攻は情報社会学、社会哲学。著書に『ハクティビズムとは何か』(ソフトバンク新書)、共編著に『「統治」を創造する』(春秋社)、など。TBSラジオ『荒川強啓デイ・キャッチ!』火曜ニュースクリップ担当としてレギュラー出演中(http://www.tbsradio.jp/dc/)。

世界中から危険視される人工知能

 こうした危惧に加え、人工知能を危険視する声が各界の大物からも聞かれる。電気自動車企業「テスラモーターズ」のCEOにして、宇宙へのロケット輸送を行う「スペースX」社を創設し活躍するイーロン・マスク(1971〜)もその一人だ。彼は起業家としてスティーブ・ジョブズ(1955-2011)以来のカリスマとも呼ばれるが、2014年から度々トークショー等で人工知能の危険性を指摘する。

 マスクは2014年から度々トークショー等で人工知能の危険性を指摘する。彼によれば、「深刻な危機が5年以内に訪れる可能性がある」として、最悪の場合ロボットが人間をスパムと認識し襲ってくるかもしれないと警告している。また彼は「私は自分が理解していない分野についてデタラメを言っているのではない」と述べていることからも分かる通り、極めて真剣にこの問題を捉えている(http://www.lifehacker.jp/2014/11/141127elon_musk.html)。その後2015年1月には、安全性を目指した「人類のためになる」人工知能研究に1000万ドルの資金を寄付すると発表している(http://wired.jp/2015/01/19/elon-musk-ai-safety/)。

 マスクだけでなく、天才物理学者のスティーヴン・ホーキング博士(1942〜)もまた人工知能が将来人間を滅ぼすと警告している。加えてあのマイクロソフトの創業者であるビル・ゲイツ(1955〜)もまた人工知能に疑問を持っていると主張している。

 人工知能が人間を滅ぼすかどうかの議論を現時点でしても未知な部分が多く、結論を出すのは困難だ。だが裏を返せば、人工知能危険論は、人工知能研究がそれだけ驚異的な発展を遂げていることの証左でもある。2006年のディープ・ラーニング誕生から来年で10年を迎える今、グーグル、アップル、マイクロソフトなど、IT企業が巨額の資金を投じ、こぞって開発を競うその研究の果てに、我々はどのような未来を見るのだろうか。

人工知能の未来と人間意識

 2015年の1月から、NHKで人工知能の未来を主題にした番組「NEXT WORLD」が全5回に渡って放送された(http://www.nhk.or.jp/nextworld/)。番組は2045年を生きる青年の目を通して未来を伝える。その社会は常に青年の話し相手になっている人工知能があらゆる未来を導き出し、外出するタイミング、行くべき場所、出会った他者と恋愛に発展するかどうかを確率論で伝える。人工知能の予測に囲まれた社会を生きる主人公は人生に疑問を感じ、最後はデータ不足から未来予測が困難な火星への移住を決定することで物語は終わる。

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