2024年11月22日(金)

中島厚志が読み解く「激動の経済」

2015年3月25日

【図表3】主要国:労働生産性増減率の推移
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 したがって、日本の活力ある経済・社会の維持には、長期戦略である少子化対策だけでは足りない。短期的な対応も強力に推進していかなければならず、その最たるものが人材の一層活用やより少ない人数で同等の成果を挙げることによる生産性向上であり、内外の労働力の動員・確保である。

 このうち労働生産性の伸びについては、日本は主要国と比べると比較的良好な位置づけにある(図表3)。しかし、内訳を見ると安心はできない。近年の日本の労働生産性上昇の背景には、短時間(パートタイム)労働者を多く含む非正規労働者が増加して労働者当たりの年平均労働時間が減少したことが効いているからである(図表4)。とりわけ、短時間労働者は平均で一般労働者(フルタイム労働者)の6割弱の時間しか働いていない。

【図表4】一般労働者・短時間労働者別年平均労働時間
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 年平均労働時間の減少自体は、生活にゆとりをもたらすものであり、必ずしも悪いことではない。しかし、それが一般労働者の労働時間が高止まりする中で労働可能時間を充足しない短時間労働者が増える形で実現されている現状は、非効率であり、人材の十分な活用にもなっていない。

 一方、労働力の動員・確保も欠かせない。同じような第4段階にあるドイツと比べても日本の生産年齢人口割合は4%ほど少なく、その分経済を支える活力は乏しいことになる。

 もちろん、対応としては女性や高齢者の労働参加率を上げてその一層の活躍を図ることが第一である。くわえて、短時間労働者を多く含む非正規労働者を正規化すれば、その労働時間が増えて一層の労働力確保につながる。


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