2024年12月22日(日)

中島厚志が読み解く「激動の経済」

2015年3月25日

 現在、労働需給はひっ迫しつつあり、失業率は人手不足で賃金が上がる水準にまで達したとも計算される。しかし、1%前後の成長率と景気は大して強くないのに、雇用が改善しつづけている現状は違和感があるようにも見える。

 実は、人口増減と経済成長との間には多くの国で共通の傾向が見て取れる。そして、日本は、ドイツと並んで少子高齢化の影響が最も色濃く出る段階にあり、現状程度の弱い景気でも雇用が改善する一因ともなっている。

 原油安や円安もあって、今後景気は力強く回復し、人手不足がさらに広がる可能性は強い。少子高齢化もさらに進むことから、このままでは人手不足は恒常化していくことになる。これは、何年も前に少子高齢化の帰結として想定された事態がいよいよ実現しつつあることに他ならない。

 このことは、日本企業にとって人材活用や省力化などでの生産性向上と労働力の確保が大きな経営課題となっており、それに注力しなければならないことを意味している。ところが、日本企業には、まだこの喫緊の経営課題が広く共有されているようには見えない。

各国共通する生産年齢人口比率と実質GDPの関係

 生産活動に中心的に従事しうる15歳から64歳までの年齢の人口が総人口に占める割合(生産年齢人口比率)と実質GDPとの間には多くの国で同じような動きが見て取れる。

 それは、横軸に生産年齢人口比率、縦軸に実質GDPをとると、図表1のような横M字型となるものである。すなわち、第1段階は、人口が大きく増加して生産年齢人口比率も上昇することで経済が成長する段階である。

【図表1】生産年齢人口比率と実質GDP
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 第2段階は、人口増加率が鈍化し生産年齢人口比率の上昇も止まる段階である。ただし、この段階では、それまでの経済成長や教育普及の成果が出て、生産年齢人口比率の上昇は止まっても人材の開発と資質向上で経済成長は持続する。


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