2023年2月7日(火)

Wedge REPORT

2015年4月14日

»著者プロフィール
著者
閉じる

香田洋二 (こうだ・ようじ)

ジャパンマリンユナイテッド顧問 元自衛艦隊司令官

1949年生まれ。72年防衛大学校卒業。海上幕僚幹部防衛部長、佐世保地方総監、自衛艦隊司令官などを歴任し、2008年に退官。09~11年、米ハーバード大学アジアセンター上席研究員。

 次に中国が空母機動部隊を戦力化して南シナ海で運用する場合、仮に米軍のプレゼンスが低下したとすれば同海域の戦略バランスが中国側に傾くことは明白である。また、三亜基地に配備される中国SSBNに搭載される戦略弾道弾JL-2の射程(5000キロメートル)では南シナ海から米国主要部に到達しないため、SSBNは太平洋・インド洋において行動する必要がある。このため中国は三亜から両海域へ出撃・帰投するSSBN防護を確実にするため、同海域における制海権の確立を目指すことは兵理の常識である。

 もし中国A2ADの狙い通り米国のアジア太平洋地域への介入意図が萎えた場合には、米軍のプレゼンスが低下し介入が遅れることとなり、当地域における中国の冒険主義を抑えきれなくなる恐れが高い。勿論、米国はA2ADに対して毅然と臨むことを表明しているが、ここで米戦略支援上、豪新型SSが大きな意義を持つ。

 そもそも水中で湾曲する音波を使用することから潜水艦探知は非常に難しく、対潜戦能力が高いといわれる日米であっても行動中の自国以外の潜水艦の所在を全て確実に把握することはできないのが一般的である。日米に比べ対潜戦能力が立ち遅れている中国海軍は、これを自覚し鋭意向上中とはいえ、今後10年強の間は日米にははるかに及ばないと見積もられる。

 新型SSの巡航ミサイルによる戦略打撃能力は中国の環礁埋め立て基地の一部を無力化するに十分であり、また対艦ミサイル及び魚雷攻撃により中国にとって虎の子かつ国家の誇りである空母そのものを海底に葬り去ることも可能となる。更に三亜基地に対する戦略打撃力及び同基地から行動するSSBNに対する対潜戦能力も中国の戦略立案上無視できない要素である。

中国にとって虎の子である空母「遼寧」(SHINKASHA/AFLO)

 以上が新型SSの中国に与えるに与える戦略的影響であり、中国海軍にとってはわずか12隻とはいえ、その脅威が極めて高いことから、中国は本計画と日豪協力に対し、あらゆる手段を講じて反対することが予測される。

 我が国はこの様な外乱に惑わされることなく、大局的見地から官民一体となり整斉と取り組むことが肝要である。本件は防衛産業初の大規模国際協力であり全てが未知であるが、両国政府の支援を得た最適の業務分担体制を確立することにより建造、運用・後方支援の各分野において真に我が国益に貢献する日豪防衛協力を実現することができる。

  

▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。

◆Wedge2015年4月号より

 


新着記事

»もっと見る