2024年11月24日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年4月27日

出典:David Pilling‘Round two in America’s battle for Asian influence’(Financial Times, April 1, 2015)
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/fabfd8ac-d6c1-11e4-97c3-00144feab7de.html#axzz3W1wHgNv0

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 上記ピリングの記事は、表層的な論説だとの感を禁じ得ません。AIIBとTPPは本質的に違う問題です。これを同一視し、今回はどちらが勝つか負けるかといった論旨は適切ではありません。AIIBは世界のシステムの構築に関する基本的事柄であり、TPPは言わばFTAを巡るひとつの交渉です。更に、ピリングは、中国が交渉から排除されていることを強く指摘しますが、中国は交渉参加申請をした訳でもありません。ピリングの言う中国排除論は、中国側が主張する中国包囲論の議論に符合します。また、実際中国が参加すれば、TPP交渉は今まで以上に難航することが予想されます。WTO(世界貿易機関)や気候変動交渉などでの中国の行動を見れば、それは容易に分かるでしょう。今まで中国の締結したFTAのレベルは総じて高いものでもありません。

 アジア太平洋の多くの国々は、中国の経済発展を肯定的に受け入れているとしても、中国外交の意図が国際協調的なものなのか、国際社会のルールを守って行こうとするものなのか、それとも現状に挑戦して行こうとしているのか等については、未だ自信を持てないでいるのが実情でしょう。例えば、欧州は、AIIBの議論を見ても、そのような重要なニュアンスを十分に理解していないように思われます。アジア情勢について、欧州ともっと議論をしておく必要があります。来るドイツでのG7でもきちっと議論をすべきです。所謂INF(中距離核戦力)交渉について、1980年代当時、欧州と日本の間で考え方の相違がありましたが、ウィリアムズバーグ先進国首脳会議などを通じて、意見の収斂を見たことがあります。

 TPPは是非成功させなければなりません。経済のダイナミズムの維持、発展のために必要です。成功のカギの一つは米議会にあるので、オバマ大統領の力量に期待したいと思います。また、日本も大局的見地に立って、良い役割を果たすべきです。

  

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