妥協を重ねた都構想では、大阪は決して強くならない─。その矛盾を指摘してきた気鋭の政治学者は、都構想が提起した本質的な問題を国家的な観点で議論していくべきだと言う。
小誌2014年4月号で、都構想とは、突き詰めれば大阪が大都市を目指すのか、地方都市の一つでよしとするのかの選択だと指摘した砂原庸介氏に、都構想否決が投げかける問題を聞いた。
砂原庸介(Yosuke Sunahara)
大阪大学大学院法学研究科准教授
1978年大阪府生まれ。東京大学教養学部卒業、同大学院総合文化研究科後期博士課程単位取得退学。専門は行政学・地方自治。大阪市立大学大学院法学研究科准教授を経て現職。(写真:井上智幸)
大阪大学大学院法学研究科准教授
1978年大阪府生まれ。東京大学教養学部卒業、同大学院総合文化研究科後期博士課程単位取得退学。専門は行政学・地方自治。大阪市立大学大学院法学研究科准教授を経て現職。(写真:井上智幸)
編集部(以下、編):大阪市民は地方都市の一つになることを選択したと言えますか
砂原准教授(以下、砂原):結局、そのような本質的な選択にはならなかった。都構想否決は単一の要素で語ることはできないが、私には市議会・市役所が嫌いか橋下徹市長が嫌いかという感情が前に出ているように見えた。
提案された協定案は、維新にとってもベストの案ではなく妥協の産物だったと思う。もともとは大阪を強くするために、広域自治体である府への集権化が強調されていたが、各特別区で行政サービスの水準に差が出るという反対派の立論に対抗するために、新たに設置される特別区の機能や権限を強調するようになった。
大阪を再び大都市として成長させるというのなら、府知事と区長が同じ方向を向く必要があるだろう。そのために、例えば同一日に選挙を行うような制度的工夫が必要になる。そういう配慮なしに都構想が実現しても、知事と5人の区長がバラバラに選ばれるようでは意見がまとまらず、現状より悪化した可能性が高かったのではないか。