人道支援団体ピースウィンズ・ジャパンが新たな拠点に選んだ広島県神石高原町。代表の大西健丞氏がこだわったのは、「いのちを体感し、いつくしむ場所」。新たな町おこしが始まったのは、“よそ者”を受け入れる町民の懐の深さがあったからだ。
イラクやアフガニスタンなどでの人道支援を行うNPO(特定非営利活動法人)が、広島の山の中で町おこしを始めた。
福山駅から車で1時間ほど。標高500メートルほどのところにある神石高原町に今年7月4日、「神石高原ティアガルテン」がグランド・オープンする。町が運営していた体験施設「仙養ヶ原ふれあいの里」を見直し、民間の力で再生するPFI(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)事業として取り組む。中心になっているのが難民キャンプの支援などを行ってきたピースウィンズ・ジャパン(PWJ)だ。
人道支援の団体がなぜ町おこしなのか。ティアガルテンのコンセプトは「いのちを体感し、いつくしむ場所」。動物や植物、自然、人とのふれあいを通じて、すべてのものの「いのち」の尊さを体感し、難民の生活にも思いをはせてもらおうというのだ。
公園の奥で目を引くのが広大なドッグラン。柵で囲ったいくつもの広場があり、犬が自由に走り回っている。規模は西日本最大だ。周囲の犬舎には、すんでのところで殺処分を逃れた保護犬が200頭あまり。広島県は捨て犬の殺処分頭数が全国最悪だったという不名誉な記録を持つが、これをゼロにする計画を立てている。
「ふるさと納税」の仕組みを活用、神石高原町にPWJを指定して寄付すると、この「犬の殺処分ゼロ」プロジェクトに95%が充てられる仕組みを整えた。実質的な負担をほとんどしないでも「支援」できるようにしたのだ。