そして、今回の都構想では肝心な資金面の手当てをどうするか議論できなかった。行政機構を再編しても、使える収入が変わらず、支出の義務的水準が高いままでは、どうやっても大きく変わるとは考えにくい。
編:都構想は初めから無理があった?
砂原:住民投票の根拠でもある、大都市特別区設置法の設計が強く影響した。本来、東京以外にエンジンとなる大都市をつくるかどうかは、国として決めるべき話であり、住民投票で決める話とは思えない。人口や産業が自然に集中していく東京以外に、特別なメリットを享受する大都市を設置するかどうかの判断だ。
維新は、東京以外の大都市に財源と権限を寄こせという地方分権を掲げ、名古屋市や福岡市と連携して国政にうねりを起こすとすれば分かりやすかった。東京の利益を重視する石原慎太郎・元東京都知事と連携し、氏が率いる太陽の党と合併したのは、選択肢を縛る結果につながったのではないか。
大都市地域特別区設置法で税財源の議論が大阪に限定されたので、市の金を府と区のどっちへもっていくのか、サービスは上がるのか下がるのかという話ばかりになった。
民意を反映しない議会
編:新著『民主主義の条件』(東洋経済新報社)では、議会の問題を幅広くとりあげていますね。大阪市会にも問題はあるのですか
砂原:協定書に、地方議会での意思決定の問題が残されているのが、賛成できないと感じた最大の理由だ。
特別区で10人とか20人の区議を大選挙区制で選ぶというのは、府知事にリーダーシップを持たせようという狙いとは全く相容れないしくみだ。当選ラインは有権者の10%にも及ばなくなり、過半数の民意を気にしなくても当選できてしまう。小選挙区で選出される知事や区長の意見にもほとんどなびかなくなるだろう。